2025年6月 北海道歯科医師会「高齢者の残存歯数は全身の健康に影響」
認知症と残存歯数は因果関係を持っています。認知症と認定されていない65歳以上の4,425名を対象に行った4年間の追跡調査では、年齢、持病の有無、生活習慣などにかかわらず、歯がほとんどないのに義歯を入れていない人は、20本以上歯が残っている人の1.9倍認知症発症のリスクが高いことがわかりました。同じ調査では、歯がほとんどなくても義歯を入れていると、認知症のリスクを約4割低下できる可能性も示されています。食物を噛む行為により脳を直接刺激することが認知症の予防に有効と考えられます。
また残存歯数は、転倒と関係することも判明しています。過去1年間に転倒経験のない65歳以上の約1,800名を対象とした4年間の追跡調査では、19本以下で義歯を入れていない人は、20本以上の人より転倒リスクが2.5倍高くなることが示されています。19本以下でも義歯を使用している場合の転倒リスクは1.36倍で、義歯によってリスクが約半分に低下。噛み合わせは、体全体の動きやバランスに関係することで、高齢者の転倒を左右する条件のひとつと考えられます。
さらに残存歯数と骨密度の関係も指摘されており、歯の数が少ない高齢者は、骨粗鬆症の割合が高い傾向にあります。65歳以上の方が要介護になる原因の第5位は、骨折、転倒です。歯の数が少なくなると、骨ももろくなっている可能性があることに注意が必要です。まさに歯の数が全身の健康に影響するといえます。特に88歳以上では、男女とも歯数が多いほど医療費が少なく生存年数も長くなっています。
食事を楽しむのに必要な歯の数はおおよそ20本以上とされていますが、80歳の平均歯数は12~13本、歯を失う最大の原因は歯周病です。80歳で残存歯20本以上を目指して適切な歯みがきや定期的な歯科受診を心がけましょう。