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北海道支部

2025年8月 北海道薬剤師会「酷暑の陰に潜む“眠りの質”─睡眠不足が招く熱中症─」


夏の強烈な日差しの中、熱中症による救急搬送の件数が年々増加しています。水分不足や高温環境などが主因として語られる一方で、「睡眠の質の低下」が熱中症の発症に密接に関係しています。なぜ睡眠不足が熱中症を引き起こしやすくするのでしょうか。

人間の身体は、体温を一定に保つための巧妙なシステムを備えています。発汗、皮膚血管の拡張、呼吸数の増加などによって余分な熱を放出し、体温上昇を抑えるしくみです。
しかし、睡眠不足によって自律神経の働きが乱れると、この調整システムが正常に機能しなくなります。特に、深い眠り(ノンレム睡眠)が不足すると、副交感神経の働きが弱まり、日中でも交感神経が過剰に優位になった状態が続きます。結果として、心拍数や体温が高く維持され、外気温の影響を受けやすくなってしまうのです。

さらに、暑さによるストレスも加わることで、自律神経のバランスはさらに不安定になり、「熱の放散ができない」「汗をかきにくい」といった状態が加速します。
睡眠不足は、単に身体的な不調を引き起こすだけではありません。脳の認知機能、特に前頭前野の働きが低下することで、「正しい判断」ができなくなるリスクも大きいです。
たとえば、暑さの中で無理な活動を続けてしまったり、周囲の忠告を聞き入れずに「自分はまだ大丈夫」と思い込むといった過信行動。さらには、水分を摂るべきタイミングでそれをしなかったり、帽子や日傘などの遮熱アイテムの使用を忘れるなど、小さな判断ミスが重なった結果、症状の進行を許してしまいます。

熱中症は、初期症状があいまいなため、発症者自身が危険を察知しにくいという特徴があります。だからこそ、判断力の低下は命取りになりかねないのです。
熱中症予防のために必要なのは、日中の対策だけではありません。むしろ、夜間の「質の高い睡眠」が、翌日を安全に過ごすための土台になります。

以下のようなポイントが、睡眠の質向上に有効です。

■寝室の室温と湿度を最適化(理想的な環境は26〜28℃、湿度50〜60%)
■寝る前のスマホ・パソコンの使用を控える(ブルーライトは入眠を阻害)
■カフェイン・アルコールの摂取を控える(利尿作用や覚醒作用が影響)
■起床時に自然光を浴びる(体内時計のリセットに効果的)

これらは単なる快眠法ではなく、体温調節機能を回復させる“戦略的な熱中症の予防策”でもあるのです。

近年の研究では、「睡眠時間が6時間未満の人は、熱中症関連の症状が出やすい傾向がある」といった調査結果が報告されています。また、夜間の寝苦しさによる断続的な睡眠(中途覚醒)が、自律神経の不安定さを増加させ、日中の体温維持力を弱めるという知見もあります。
特に高齢者は、年齢とともに睡眠の質が低下することが知られており、熱中症への耐性が弱いというダブルリスクを抱えています。
冷却グッズや水分補給だけでなく、夜の眠りを見直すことから始める熱中症対策をしてみましょう。眠るという行為が、命を守る最初の一歩になるのです。

(理事 林 正敏)


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