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北海道支部

2022年4月 北海道医師会 「HPVワクチン積極的勧奨の再開」


 今年4月からHPVワクチンの積極的勧奨が再開されました。この8年半以上におよぶワクチン接種差し控えにより、本来は予防し得た子宮頸がんで悩まれる方もいらっしゃいます。二度とこの断続が無いよう、今回は子宮頸がんとHPVワクチンについてお話させていただきます。


【子宮頸がんとHPV】
 2020年の統計において、子宮頸がんは、世界の40歳未満女性のがん死亡数第2位、罹患数の第3位を占めるがんです。欧米では、子宮頸がんの罹患数は減少しているのに対し、本邦では増加傾向にあり、毎年約1万1千人(上皮内癌を含めると毎年3万5千人)が罹患し、3千人弱が亡くなられています。
 子宮頸がんの原因は95%以上がハイリスク型のHPV持続感染によるものです。HPVは環状2本鎖DNAウイルスで、200以上の遺伝子型を有します。皮膚に疣贅(ゆうぜい)を引き起こす皮膚型と、性器周辺に感染する粘膜型に大別され、粘膜型の中でも HPV 16、 18、 31、 33、 35、 39、 45、 51、 52、 56、 58、 59、 66、 68 型などのハイリスクHPVが子宮頸がんの原因となります。
 HPVは性的接触により感染しますが、感染しても約9割は自然に排除され、子宮頸がんを発症するのはHPV持続感染の1%未満です。また、癌化には、数年から数十年を要します。HPVは、性交渉経験がある女性の80%以上が感染するウイルスで、感染しても早期に発生する症状がなく、大部分が子宮頸がんを発症しないので、性感染症ではありません。
 子宮頸がんは、進行すると死に至るだけでなく、治療により排尿機能障害やリンパ浮腫などQOLが低下する可能性があるがんです。また、若年発症においては、妊孕(にんよう)性を失う可能性や、たとえ初期の子宮頸がんや前がん病変で子宮が温存できても、不妊症や、流産・早産などの周産期リスクを有する可能性があります。
 一方、子宮頸がんは、一次予防としてHPVワクチン、二次予防としてがん検診があり、予防方法が確立したまれながんであるとも言えます。しかし、現在本邦は、世界でも最も低いHPVワクチン接種率の国の一つであることはご存知のとおりです。また、HPVワクチンには、すでに感染しているHPVの排除や子宮頸部病変の治療効果はないため、HPVワクチン接種後も定期的に子宮頸がん検診を受け、早期発見に努めることが重要です。欧米でのがん検診受診率は8割を超えますが、本邦では4割程度と低いことが知られており、適切ながん検診の遂行も重要課題です。


【HPVワクチンの有効性について】
 HPVワクチンは、ウイルスを模倣した外殻のみ有するvirus-like particle (VLP)ワクチンで、内部にDNAゲノムを持たないため、感染性は見られません。すでに、HPVワクチンは、世界の92ヵ国で定期接種となり、8億回以上の接種が行われています。スウェーデンや国家プロジェクトとして導入されている国々からは、HPVワクチンは子宮頸がん発生に大きく寄与したという報告が複数され、接種世代と非接種世代で明らかな差が生じています。また本邦においても、CIN3(高度異形成、上皮内癌)までの病変の予防効果について報告が行われており、HPVワクチン接種プログラムは本邦においても明らかに有効であることが報告されています。


【HPVワクチンの安全性について】
 HPVワクチンは、本邦では2013年に4月に定期接種ワクチンのとして認定されましたが、同年3月頃より、ワクチン接種者の広範囲に渡る疼痛や手足の動かしにくさなどの多様な症状が繰り返し報道されるようになり、国民の不安感増長も見られ、同年6月に積極的勧奨は中止されました。約8割まで増加したワクチン接種率は、積極的勧奨一時差し控えを受け、2%以下まで急激に低下しました。
 全国疫学調査により、HPVワクチン接種有無にかかわらず、多様な症状が一定数存在することが判明し、また国内外において多くの解析が慎重に行われました。その結果、ワクチン接種後の多様な症状と,HPVワクチン接種との因果関係を科学的・疫学的に示す報告は認められませんでした。HPVワクチン接種後の多様な症状は機能性身体症状との見解が確認され、近年ではWHO(世界保健機関)より予防接種ストレス関連反応(ISSR)という概念が提唱されています。
 HPVワクチンの副反応については、日本医師会・日本医学会より「HPVワクチン接種後に生じた症状に対する診療の手引き」が公開され、対応について詳細に記載されています。また、厚生労働省のホームページでもHPVワクチン接種後に生じた症状の診療に係る協力医療機関が公表され、地域における診療・相談体制が構築されています。HPVワクチンに限らず、すべてのワクチンに関して予防接種健康被害救済制度があり、予防接種と健康被害との因果関係が認定された方を迅速に救済する制度が設けられています。


【世界の動向】
 世界においては、2019年に子宮頸がん年間調整罹患率の予測モデルにより、ワクチンと検診が高い頻度で実施されれば、『子宮頸がんは今世紀中に排除(人口10万人当たりの罹患が4人以下になること)が可能』と報告されています。WHOは、2019年1月に子宮頸がん排除に向けた世界的戦略を策定し、2030年までの目標として、①15歳までの女子のHPVワクチン接種が90%以上となること、②子宮頸がん検診受診率70%以上となること、③前癌病変および浸潤癌の女性の90%以上が適切な治療をうけられることの3つを掲げています。現在、本邦では、3番目の目標しか達成できていない状況にあります。


【HPVワクチンの種類】
 本邦で承認されているHPVワクチンは3種類あります。公費対象となるのは定期接種対象ワクチンである、HPV16/18型の感染を予防する2価ワクチンのサーバリックス®、HPV16/18型に加え尖圭コンジローマの原因となるHPV6/11型を予防する4価ワクチンのガーダシル®の2種類です。
 2021年2月から9価のHPVワクチンであるシルガード9®が本邦において販売開始となりました。シルガード9®はHPV6/11/16/18/31/33/45/52/58型の感染を予防します。9価ワクチンが普及すれば、子宮頸がんの90%以上が予防可能になると期待され、複数の国で使用されていますが、本邦においては現在定期接種の対象ではなく、公費での接種は受けられません。


【HPVワクチン積極的勧奨の再開】
 今年4月からは、積極的勧奨の再開として、12~16歳の女子に個別に通知してワクチン接種を促すことになりました。また、平成25年から8年間ワクチン接種の勧奨を差し控えしていたために接種できなかった女性に公費で接種(キャッチアップ接種)することが可能となりました。
 子宮頸がんの予防・排除にはワクチン接種と検診の両者が必要です。今回の積極的勧奨再開にあたっては、学校教育機関、行政、関係団体などと協力のうえ、一人一人に向けた正しい情報の提供やワクチンの接種率の向上、さらにがん検診対策を行い、子宮頸がん予防・排除推進へ進んでいくのが、私たちの願いです。


(常任理事 寺本瑞絵)



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