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メールマガジン83号(2018年10月5日)

心療内科の勧め   北海道医師会

 胸が苦しく動悸がするので、循環器内科で心電図や心エコーなどの検査を行ったが「問題ありません。」胃が痛いので胃内視鏡の検査をしたが「胃の中はきれいです。」めまいを訴えて耳鼻科で検査すると「特に異常ありません。」蕁麻疹で薬を処方されている皮膚科では「原因はよくわかりません。」

 このような会話が診療現場のどの科でも結構の割合でなされているのを、受診者から聞くことがあります。医療側からすれば医師の専門領域や守備範囲からの検査や診断の結果による説明なので、「異常がない、悪いところは見つからない」という自体間違ってはいません。しかし、意を決して医療機関を受診した者にとっては、病状がなぜ起きているのかこれでは理解できないし、釈然とせず不安が残るは当然でしょう。

 日常の診療をしていると、症状はあるが器質的な疾患が見つからないケースは確かに多いと感じます。医療機関を受診しやすい健康保険制度や医療技術が高度となった今の医療では、受診者の期待と医療者の関心は、器質的疾患の有無の早期診断と最先端の技術や薬による治療に重点が置かれています。検査や画像診断では明確とはならない「心と身体が密接に関連している」機能的な疾患には、精神科を除く身体科である内科系や外科系の領域では必ずしも関心があるとは言えません。

 厚生労働省の全国調査では、国内の2,800万人が腰痛に苦しんでおり、その8割が原因不明であることが明らかになりました。さらに日本整形外科学会などはこれまでの腰痛治療の常識を覆す「治療ガイドライン」を発表しました。多くの腰痛の原因は「心理的・社会的ストレス」と考えられ、肉体的・精神的日常生活の改善こそが腰痛予防であると理解されるようになりました。

 安定した人間関係の構築が難しくなった現代社会では、心の悩みを抱える人々が多くなって、メンタルヘルスが国民やメディアの関心事になってきています。過重労働問題や働き方改革が社会的問題となり、不安抑うつ状態や適応障害の人々はますます増えて、精神科では新患の受け付けを断っている状況です。不安抑うつ状態を訴える人々の中にも身体的に不調を訴えますが、精神科では心療内科とは異なり、胸部エックス線、心電図、内視鏡などの身体的診療より精神的面からの診断治療が主になります。

 心療内科は内科系の心身症を主に診療対象とする一般内科です。心身症とは体の病気であって心の病気ではありません。心療内科の立場から見れば、高血圧、心臓神経症、消化性潰瘍、過敏性腸症候群、気管支喘息、メニエール病、蕁麻疹など多くの疾患が心身症の範疇にはいります。体の病気を引き起こす心の状態はどのような状態なのかを理解するのが、心身症を診る心療内科にとっては大切なことです。

 人を身体面だけでなく、心理面や社会面などを含めて、全人的に治療しようとするのが心療内科です。身体的な診察や検査と同時に心理テストや心理・社会面から症状の原因を探る面接が行われ、そして身体的治療を行いながら精神的治療も行われます。「病気を診るより、病人を診て」心と体の両面から治療するのが心療内科である、と心療内科学会のホームページにも記されています。