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北海道支部

2025年4月 北海道医師会 「認知症の予防を始めましょう〜半数近くが予防可能です〜」


認知症とその将来推計
 認知症とは、いったん正常に発達した知的機能が持続的に低下し、複数の認知機能障害があるために社会生活機能に影響を及ぼす状態とされています。つまり、生活に影響を及ぼすことが、認知症と診断するときのカギとなります。ここで言う認知機能とは、記憶、実行機能、言語、知覚-運動などを指します。高齢者の増加に伴い認知症の高齢者も増加し、現在と同じ割合で推移すると2040年には802万人が認知症になると推計されています。認知症の社会的費用は、わが国で年間約14.5兆円という試算もあり、社会全体の大きな問題です。そして、認知症になることで、本人の生活の質も大幅に低下しますので、認知症の患者さんを少しでも減らすことが今後の課題になります。

認知症治療の現状
 現在主に用いられている認知症の主な治療薬は、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれる薬です。脳は、神経が集まっている組織で、認知症の半数以上を占めるアルツハイマー型認知症では、ゆっくりと神経の細胞が障害されます。一方、脳は、神経だけではなく、「神経伝達物質」と呼ばれる目には見えない物質が神経と神経を取り持っています。その一つがアセチルコリンです。つまり、障害を受けて減少した神経の細胞のはたらきを、アセチルコリンの量を維持することで補っているということになります。したがって、アルツハイマー型認知症の病気の進行を変えている訳ではありません。
 そこで、認知症の進行を抑制する薬剤の開発が世界的に進められてきました。そして、一昨年(2023年)12月に、大きな期待のもとレカネマブという薬が我が国で使用可能になりました。この薬は、アルツハイマー型認知症の主な原因とされている、ベータアミロイドというタンパク質を脳から取り除く効果が期待される薬です。しかし、この薬を使えるのは早期の患者さんに限られ、薬剤費も高額である上に、2週間に1回の点滴による投与が必要で脳のむくみや出血の副作用もあることから治療できる医療機関が限られるなど、残念ながら現在のところ一般的な治療とはなっていません。
 一方、認知症はある程度予防可能であることがわかってきました。では、一体どの程度の認知症が予防できるのでしょうか。そして、予防にはどのような方法があるのでしょうか。

英国「ランセット」誌のまとめ 
 英国の医学雑誌「ランセット」の専門委員会は、世界各国の認知症に関する論文を調べ、定期的に認知症の予防、介入および介護についての記事を公表しています。最新版が2024年8月に公表されました。それによると約半数の認知症が14の危険因子を取り除くことで理論的に予防可能であるというのです。これは画期的な数字だと思いませんか。生活習慣などの改善により、将来の認知症患者さんの数が半分にできる可能性があるのですから。
 今回の発表では、これまで公表されてきた12の危険因子に、2つが新たに加えられ、14の危険因子を修正することで、45%の認知症が予防可能とされました。それぞれの危険因子を紹介します。カッコ内は危険因子の除去により、認知症の現症が期待できる割合を示します。
 まず、人生早期の危険因子として教育歴の少なさ(5%)が挙げられています。人生中期の危険因子として難聴(7%)、高LDLコレステロール血症(7%)、うつ状態(3%)、頭部外傷(3%)、身体的不活動(2%)、糖尿病(2%)、喫煙(2%)、高血圧(2%)、肥満(1%)、過度の飲酒(1%)が挙げられています。また、人生後半の危険因子として、社会的孤立(5%)、大気汚染(3%)、視力低下(2%)が挙げられており、すべて足し合わせると45%となり、これが予防可能な認知症の割合とされています。このうち、視力低下と高LDLコレステロール血症が昨年新たに追加された項目です。
 このほか、食事内容や睡眠等も認知症の発症に関係している可能性が指摘されており、今後の研究により、予防可能な割合がさらに増加することが期待されています。

さあ、今日から始めましょう!
 それでは、具体的にどのように危険因子を取り除いていけば良いのでしょうか。
 まず、高コレステロール血症、糖尿病、高血圧に関しては、積極的に検診を受け、もし異常が見つかれば、医師から適切な生活習慣の指導を受け、必要があれば治療を受けるようにしましょう。また、糖尿病の予防や肥満の改善、身体的不活動の解消には、運動が有効です。特に、有酸素運動が認知症予防に有効であることがわかっており、具体的には、最大心拍数の60〜90%の強度で、1回に20〜60分、週に3〜5回の有酸素運動を行うことが推奨されています。ウオーキングに当てはめると、少し速めで、楽におしゃべりができなくなるぎりぎりの程度が良いと言われています。
 そのほか、集音器や補聴器、適切な眼鏡を使用することにより、聴力や視力を矯正することも有効です。そして、言うまでもありませんが、禁煙や、飲酒を控えることも認知症の予防につながります。
 認知症は生活習慣等の改善で危険因子を取り除くことにより約半数が予防可能です。皆さん自身と社会全体の健康を目指して今日から予防に取り組みましょう。

(常任理事 荒木啓伸)


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