2020年10月 北海道医師会 「新型コロナウイルスについて」
令和02年10月01日
2019年12月、中国の湖南省武漢市で原因不明の肺炎患者が集団発生しました。肺炎の病原ウイルスは新型コロナウイルスと確認され、全世界へ拡がりパンデミックとなり、多くの感染者が死亡しています。この新型コロナウイルスはCOVID-19と命名され、本邦では新型コロナウイルス感染症を指定感染症および検疫感染症に指定しました。ヒトに感染するコロナウイルスはこれまで4種類あり、一般的な「かぜウイルス」とされています。
2002年中国・広東省より重症急性呼吸器症候群(SARS)が発生した感染症は、コウモリのコロナウイルスがハクビシンを介してヒトに感染しました。2012年アラビア半島より中東呼吸器症候群(MERS)が発症した感染症は、ヒトコブラクダを介してヒトに感染しました。新型コロナウイルスはSARSやMERSと同じ動物由来コロナウイルスで、βコロナウイルスに分類されていますが、宿主動物は不明です。
北海道の新型コロナウイルス感染症の状況は、1月28日、武漢市からの旅行者40歳代の女性が1例目として発生しました。札幌市では「さっぽろ雪まつり」が開催されており、2月14日以降北海道各地で次々と新型コロナウイルス感染者の報告があり、クラスターも発生したため、学校の臨時休業など北海道独自の緊急事態宣言を決定しました。
新型コロナウイルス感染症の流行は一時落ち着いてきましたが、4月上旬より全国で新型コロナウイルスの感染が拡大し、北海道において第2波の流行が発生しました。現在、東京を始め多くの都市で新型コロナウイルス感染症の第2波と思われる流行が拡大しており、北海道において第3波の流行が心配されます。
9月2日現在、北海道庁のホームページにより、北海道における新型コロナウイルス感染症の検査人数は45,519人、陽性累計は1,803人、現在患者数は121人、死亡の累計は104人、陰性確認済累計は1,578人です。感染経路は、せき、くしゃみ、唾液などによる飛沫感染と接触感染です。有症者からの感染が主ですが、症状のないキャリアからの感染の可能性もあり、注意が必要です。
潜伏期間は1~14日で、主に5日程度です。感染可能期間は、発症2日前から発症後14日程度とされています。新型コロナウイルス感染症の症状は、発熱、せきやくしゃみなど呼吸器症状、下痢や嘔吐など消化器症状、頭痛、咽頭痛や全身倦怠感や味覚異常などがあります。重症化リスクとして、65歳以上の高齢者、糖尿病、高血圧症、がん、心不全や慢性呼吸器疾患などの基礎疾患のある患者や喫煙歴のある患者が挙げられます。
新型コロナウイルス感染症に有効なワクチンはなく、現在開発中です。また、新型コロナウイルスに特異的な有効治療薬剤もありません。現在、新型コロナウイルス感染症の症状が出現して感染が疑われる場合、かかりつけ医、または保健所「帰国者・接触者相談センター」に電話で相談してください。必要に応じて、PCR検査可能な医療機関「帰国者・接触者外来」を紹介してもらいウイルス検査と診療を受けます。もし、新型コロナウイルスが陽性の場合は保健所に報告され、症状がないかまたは軽い患者は保健所の指示でホテルに入り経過観察します。症状が中等度以上の患者は専門の医療機関に入院して、患者の状態により現在有効とされているさまざまな薬剤の投与、酸素供給、人工呼吸器や体外式膜型人工肺(ECMO)等の治療を受けます。
本邦の新型コロナウイルス感染症の死亡率は、民族性か、医療体制が違うためか、欧米等の諸外国と比較して低いです。北海道の各々の地域で保健所と医療機関が連携して新型コロナウイルス感染症の医療対策を整備しています。感染拡大を防ぐためには早期に受診して、早期に感染者を発見して隔離して、重症化しないよう早期に治療を開始することが大切です。冬になるとインフルエンザの流行と重なり、新型コロナウイルス感染症と症状が似ているため診断が難しくなります。インフルエンザワクチン接種がお勧めです。
密閉、密集、密接の「3つの密」によりエアロゾルの発生するライブハウスやカラオケ店等で新型コロナウイルス感染症が集団発生しました。新型コロナウイルス感染症の予防対策として、「3つの密」状態を避けるため、換気の悪い密閉空間を避け、定期的に換気しましょう。多くのヒトが密集する場所を避けましょう。互いに手を伸ばすと届く距離(密接)での会話を避けましょう。2m以上離れることが大切です。外出時は、マスクの着用と石鹸を使用した手洗いやエタノールによる手指の消毒を忘れずに行いましょう。
(常任理事 三戸 和昭)
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