平成31年01月01日
国立がん研究センターの2014年のデータによると、一生涯で男女とも2人に1人はがんに罹患するとされております。がんの種類別死亡数の1~5位は男性では肺、胃、大腸、肝、膵で、女性では大腸、肺、膵、胃、乳房となっております。がんは一貫して増加しており、1981年以降死因順位第1位となっております。2014年がん死亡の全死亡者に占める割合は28.9%であり、全死亡者のおよそ3.5人に1人はがんで死亡しております。
また、2017年1年間に人口10万人当たり何人ががんで命を落としたかを示す「がん死亡率」は、北海道で84.1%と青森、鳥取に次いで全国3位でした。特に、北海道は肺がんによる死亡率が全国ワースト1位です。肺がん死亡率が高い原因として、喫煙率の高さが挙げられています。
道内市町村の2016年度部位別がん検診受診率は、胃が8.8%(全国8.6%)、大腸が6.3%(8.8%)、肺が4.8%(7.7%)、子宮が14.3%(16.4%)、乳が16.6%(18.2%)といずれも全国を下回っており、このことも北海道のがん死亡率が高い一因になっているといわれております。
この5つのがんは、検診によりがんによる死亡が減少することが証明されており、全都道府県で検診が実施されております。
厚生労働省によると、2015年度各がん検診の受診者数とがんの発見された人数は、肺がん407万人中1,527人(検診を受けた人の0.04%)、胃がん237万人中2,206人(0.09%)、大腸がん525万人中9,941人(0.19%)、乳がん212万人中7,024人(0.03%)、子宮頚がん391万人中1,544人(0.04%)となっております。
がん検診で発見されるがんは、症状が出てから医療機関を受診し発見されるがんより、早期がんであることが多く治療効果が高いといわれております。肺がんは喫煙に関係しないがんもあり、非喫煙者も検診を受けることが推奨されております。
がん検診の方法として、例えば札幌市の場合を挙げてみます。
肺がん検診は、男女ともに40歳以上は年に1回受けることが推奨されております。検診方法は「胸部エックス線検査」と、さらに問診により「喀痰細胞診」を追加することがあります。
胃がん検診として、男女ともに、50歳以上は2年に1回「胃部エックス線検査」または「胃部内視鏡検査」を受けることを勧めております。
大腸がん検診として、男女ともに、40歳以上は年に1回の「便潜血検査」を受けることを勧めております。
子宮がん検診として、20歳以上の女性は、2年に1回、視診、内診、子宮頚部の細胞診を行うことを勧めております。(医師の判断により子宮体部の細胞診を実施する場合あり)
乳がん検診として、40歳以上の女性は、2年に1回、乳房エックス線検査(マンモグラフィ)を受けることを勧めております。
がんは症状が出ないことも多いですが、次のような場合は直ぐに検診を受けるか、医療機関を受診することが大切です。肺がん―なかなか治らない咳や胸の痛み、呼吸するとゼーゼー音が出る、息切れ、痰に血が混じる、声がかすれる、顔や首がむくむ。胃がん―胃痛、胃部不快感、胸やけ、黒い便、食欲不振、食べたものがつかえた感じがする。大腸がん―肛門の痛みがないのに血便が出る、下痢と便秘の繰り返し、便が細くなる、便が残った感じがする。お腹がはる。子宮頚がん―月経でない時の出血、月経の量が増えたり長引いたりする、性交時の出血、普段と違うおりものがある。乳がん―しこりがある、皮膚が赤くはれる、えくぼのようなくぼみがある。
一方、がん検診にはデメリットもあります。①100%がんが発見されるわけではない。②がんがなくても精密検査や治療が必要と判定される場合がある。③進行の遅いがんを発見し、不必要な治療や検査をする可能性がある。などの指摘があります。
しかし、進行した状態で発見されると、治療に多くの時間と費用がかかることになり、場合によって命を落とすこともありえます。現在の医療用検査機器の進歩は目覚ましく、たとえば胃部内視鏡検査では経鼻内視鏡は格段に性能が向上しており、受ける方の負担も昔より軽くなっております。がん検診のデメリットはシステムとしての検診全体に関わるものであり、個人としては計画的に検診を受けたほうが良いでしょう。前述のデメリットが気になる方は検診担当医ないしはかかりつけ医に相談するのが良いでしょう。
がんによる死亡を減らすためには、検診受診者を増やすことが重要です。道では、対がん協会と協力して、がん検診と特定健診の同時実施を推進し、検診受診率の向上を目指しております。
各種がん検診についての相談は、保健センター、対がん協会などに問い合わせると良いでしょう。
(常任理事 伊藤 利道)