2018年 1月 北海道医師会 「冬に流行る感染症」
平成29年12月27日
1.インフルエンザウイルス
毎年、空気が乾燥し寒くなる11月頃から4月末までインフルエンザウイルスの流行があります。2009年に流行した新型インフルエンザA(H1N1)pdm09型、A香港(H3N2)型とB型(山形系統)とB型(ビクトリア系統)の4種類のインフルエンザウイルスのうち2、3種類のインフルエンザが各地域で流行しています。この4種類のウイルスでインフルエンザウイルスのワクチンを作っています。ワクチンは13歳未満の方は2回、13歳以上の方は1回接種します。効果は予防接種の2週後より約5か月後までです。感染経路はせきやくしゃみ等の呼吸器飛沫の吸引や手を介した接触感染です。潜伏期間は1~3日です。臨床症状は突然の高熱と全身倦怠感と筋肉通等に引き続き咳や鼻汁等の呼吸器症状が現れます。インフルエンザの発症前1日から1週間程度感染力があります。診断は鼻粘膜や鼻汁中のインフルエンザウイルスを迅速検査キットで検索可能ですが、発症12時間以内の場合誤って陰性と判定されることがあります。治療薬は内服のオセルタミビル、吸入のザナミビル、ラニナミビル、注射のペラミビルがありますが、発症48時間以内に使用すればいずれも有効です、ただし、オセルタミビルは10歳代の方には使用できません。ペラミビルは嘔吐して薬の飲めない方や重症例に効果的です。発病後2日以内の子どもに異常行動がみられることがありますので、目を離さないよう注意してください。感染症予防対策として、外出後の手洗いの励行、せきエチケットとしてマスクの着用と不要の外出を避けましょう。アルコール消毒は有効です。
2.ノロウイルス
ノロウイルスによる感染性胃腸炎は秋より春にかけて流行が見られます。感染経路は感染者の糞便や吐物、これらに汚染された物品からの経口又は糞口感染です。以前は汚染された生ガキや二枚貝を加熱不十分な調理で食べることで発病するとされていました。潜伏期間は1~2日です。臨床症状は腹痛、嘔吐と下痢です。発熱、頭痛、筋肉痛や全身倦怠感等を伴うことがあります。症状は2~3日続き、自然軽快します。3歳未満の乳幼児と65歳以上の高齢者は脱水症を合併することがあります。嘔吐や下痢により誤飲して、肺炎や窒息の危険がありますので注意が必要です。診断は臨床症状とウイルスの流行状況で可能です。重篤になりやすい3歳未満と65歳以上の方等にはノロウイルス迅速検査キットによる診断が健康保険で認められています。ノロウイルスの特異的な治療薬はないため、治療は脱水症に対する対症療法になります。経口の補液が一般的ですが、重篤化した場合は点滴や入院が必要になります。感染対策として、予防接種は開発中で現在はありません。感染者の糞便や嘔吐物の清掃はマスク、手袋やガウン等を着用して、嘔吐した周辺の十分広い範囲まで拭き取り、次亜塩素酸ナトリウム溶液(ハイター等)で消毒してください。ドアノブ、蛇口やカーペット等の場所により違いがありますが、ノロウイルスは数日間感染能力があります。また、感染者も症状が軽快した後、数日間糞便よりウイルスを確認できますので感染拡大に注意し、手洗いをまめに行いましょう。ウイルスに汚染されたカキや二枚貝を十分加熱しないで食べると感染するため、調理は内部温度が85度以上で1分間以上加熱してください。
3、ロタウイルス
ロタウイルスによる感染性胃腸炎は冬から春にかけて流行しますが、3~5月にピークとなります。毎年流行するもので、初感染時に症状が重症になりますが、感染を繰り返すにつれて軽症化します。そのため2歳以下の乳幼児が7割を占めています。臨床症状は突然の嘔吐、発熱と水様性下痢で、1週間程度で自然軽快します。合併症として、脱水症、けいれん、肝機能障害、腎不全と脳症等があります。特異的な治療薬はないため、治療は対症療法になります。感染症の拡大を予防する対策として、おむつの適切な廃棄、石鹸での十分な手洗い励行、汚染した衣服の処理を行い、次亜塩素酸ナトリウムで哺乳瓶等を消毒する方法が効果的です。最近、任意ですが、ロタウイルスワクチンによる予防対策が可能になりました。ワクチンの効果として乳幼児の感染症が減少して、重症化が抑制されました。ワクチンは2種類あり、1価ワクチンは6週齢から初回接種を始め、4週以上あけて、24週齢までに2回経口接種します。5価ワクチンは6週齢から初回接種を始め、4週以上あけて、32週までに3回経口接種します。ワクチンの効果はどちらも同程度有効ですが、週齢を超えてワクチン接種すると、腸重積等の副反応の確立が上がるため、期限内に終了してください。
(常任理事 三戸 和昭)
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