第21回:口腔がんについて
令和07年11月28日
口腔がんについて
口の中にできるがんを総称して口腔がんと呼びます。数年前に女性タレントの方が舌がんに罹患していることを公表されたのは記憶に新しいかと思います。そのタレントさんは治療を受け、現在も芸能活動を続けておられるようです。今回の記事では、口腔がんについて少し詳しく説明をしたいと思います。
口の中はほとんどが粘膜に覆われていることもあり、口腔がんの9割は粘膜にできる扁平上皮がんと呼ばれるがんです。まれに唾液腺などの組織から発生するものもありますが、大半が粘膜に発生します。できる部位によって舌がん・歯肉がん・口腔底がん・硬口蓋がん・頬粘膜がんなどに分類され、日本人では舌癌が最も多く50%以上を占めています。また、日本では女性よりも男性の有病率が高く、年齢別では60代以降が多いです。高齢化に伴い口腔がん患者は増加傾向にあると言われています。
口腔がんの発生要因としては、喫煙や飲酒の習慣、むし歯・合わない修復物・合わない義歯などによる慢性刺激、口腔内衛生不良などが挙げられ、特に喫煙は口腔がんのリスク因子として重視されています。南アジアなど、喫煙・飲酒の嗜好の強い国で有病率が高いことも報告されています。
口腔がんの症状は様々で、粘膜の色が赤や白っぽく変化したり、口内炎のような潰瘍ができたり、硬いしこりができたり、といったものが挙げられます。痛みを伴う場合も、伴わない場合もあります。とはいえ、こういった症状はがん以外の疾患でも現れることがありますので、診断のためには大学病院や総合病院などで詳しい検査を受ける必要があります。
治療には、手術療法や化学療法、放射線療法などが採用されます。がんの予後を示す5年生存率は、統計調査によってデータの差はありますが、進行度合いの低いステージIでは90%以上、周囲への転移が見られるステージIVでは40%程度と言われています。早期に発見でき、適切な治療を受けた場合は治療や日常生活への復帰も比較的容易ですが、進行してしまうと広範囲の顎骨の切除が必要となる場合もあり、治療後の日常生活への支障も大きくなってしまいます。
早期発見・早期治療のためにも、お口の周りに気になる症状が現れた場合は、お近くの歯科医院で相談してください。また、がんになりやすい生活習慣や放置している虫歯などに心当たりのある方は、それらを改善することもお勧めいたします。
佐賀県歯科医師会 地域保健部
成人産業保健委員会 委員長 福山雅大
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