第13回:歯周病と歯並びの関係について
令和03年11月11日
歯周病のリスク因子として、
①生体因子
②環境因子
③咬合因子 があげられますが、
①生体因子とは、年齢、糖尿病や骨粗鬆症などの疾患、薬物の服用(心臓疾患治療の各種薬剤、ワーファリンなどの抗凝結剤、ステロイド剤、鎮痛剤、消炎剤)などです。
特に糖尿病と歯周病の相関性については、近年ではよく取り上げられており、実際に歯周病を治療することで糖尿病の改善することが報告もされています。
②の環境因子というのは、喫煙、歯磨きの状況、歯科の定期検診の回数など、私たち自身でコントロールが可能な範囲の内容になります。軽度から中等度の歯周病がある多くの方はこの環境因子を徹底して見直すことで、ある程度歯周病を改善することができます。
③の咬合因子というのが噛み合わせに関するもので、つまり歯並びになります。
今回は歯並びがどのように歯周病を悪化させるかということを3つのパターンにわけて解説していきます。
●叢生(ガタガタ)による清掃不良 写真1(口腔内写真により閲覧注意)
ガタガタがあれば、どうしても歯ブラシが届かないところができきてしまいます。その届かない部分に残った磨き残しが歯石となり、長期的に定着する結果、歯周病が進行することとなります。
●早期接触(普通に噛み合った時に、特定の歯が強く当たる噛み合わせ) 写真2(口腔内写真により閲覧注意)
食事をする際に、特定の歯が強く接触して、負荷がかかることで、限局的に歯周病が著しく進行してしまう場合があります。特に下の前歯などは、歯茎が薄いため、早期接触があると歯茎が下がり、歯の根っこが露出してしまうことがあります。
●咬頭干渉(横に噛み合わせをずらした時に、特定の歯が強く当たる噛み合わせ) 写真3(口腔内写真により閲覧注意)
歯軋りなどで左右に噛み合わせをずらした場合に、ある特定の歯が強く接触することで、その歯に負担がかかり、その部位で歯周病が進行する原因となってしまいます。
早期接触と同じで、強い力が問題となるケースです。
これらの問題を根本的な解決をするためには、歯並びを整えるための矯正歯科治療が必要となります。しかしながら、矯正歯科治療を行わなくても、定期的に、磨けない部分の歯石とりやクリーニングに通院し、同時に噛み合わせの調整などをしてもらうだけでも歯周病の予防となります。一度、かかりつけの歯科医院で、歯周病の状態と合わせて、歯並びや噛み合わせの状態もチェックしていただいてもいいかもしれません。
佐賀県歯科医師会 地域保健部
地域保健委員会 委員 佐野 良太
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