第20回:歯科検診の重要性について
令和07年05月08日
人生100年時代を迎え、「健康に生きる」ことの重要性が増してきており、歯と口の健康状態を良くすることが、病気リスクを下げたり、生活の質を向上させるなど、多くのメリットが明らかになってきております。
なぜ、「歯と口の健康」が重要なのでしょうか?
ヒトが生まれて亡くなるまでの期間を寿命といいますが、その寿命の内、健康に生きている期間を健康寿命といいます。
現在の日本では、平均寿命と健康寿命との間に約10 年の開きがあるといわれております(図1)。
また、歯の本数が多いほど、医科の医療費は少なくて済むという事実もわかってきております(図2)。
このように、歯と口の健康管理をきちんとすると医療費全体が抑えられるのです。
歯と口の健康状態を良くすることが、病気リスクを下げたり、生活の質を向上させると述べましたが、近年、歯と口の健康、とりわけ歯周病と全身疾患のリスクとの関連性が注目されています。
歯周病は、45歳以上の2人に1人がかかるため、国民病ともいわれており、歯を失う最大の原因というだけでなく、実は、全身の病気の発症や増悪リスクと深く関わることが次々と明らかになってきております。
歯周病がある人がない人に比べて病気のリスクが高いかを示しますと(図3)、がんは1.24 倍、心筋梗塞は2.11倍、脳梗塞は1.63 倍と、全身の疾患と歯周病の関係が指摘されております。
妊婦に歯周病があると、早産および低体重児出産が3 倍に増えるという報告もあります。
特に報告数が多いのが、糖尿病関連の研究で、リスクは約2倍にものぼります。また、糖尿病が悪化すれば歯周病が悪化する。歯周病が悪化すれば糖尿病も悪化するといった相互関係が明らかになっており、歯周病の安定が糖尿病の改善に寄与することもわかってきております。
歯と口の健康は生活の質や人生の楽しみと直結します(図4)。
歯と口の健康は飲食や呼吸など生きるのに不可欠な役割だけでなく、会話や表情をつくるなど、コミュニケーションにも重要な役割を果たします。
「人生100年時代」を迎える私たちにとっては、「生活の質」こそが重要なのです。人が人らしく暮らすには、おいしく食べる、ストレスなく笑える、話せるなどの機能が保たれていることが大切です。
佐賀県歯科医師会では健康長寿のための正しい歯とお口の健康管理の3つのステップを提唱しております。
1つ目は、歯周病などは早く治して炎症を止めること。
2つ目は歯ブラシやフロスなどを使った毎日のセルフケア。
3つ目は、専門家による定期的なクリーニングやチェックです。
健康な人でも3ヶ月毎チェックすれば、悪くならずにすみます。出来れば、かかりつけ歯科医をもち、季節ごとにケアとチェックをしてもらいましょう。これを機会に、県民の多くの方が「歯科検診」を受けて、「歯と口の健康」をご理解いただき、その後の定期的な歯科受診につなげていただければと思います。
佐賀県歯科医師会 地域保健部
理事 舛元康浩
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