第3回:歯周病の進み方を知ろう!
平成29年12月21日
歯周病の進み方を知ろう!
今回は歯周病の進行について話していきたいと思います。
歯周病はさまざまな要因で進行していきますが、いきなり重度の歯周病になることはありません。一般的に、まずは歯に歯垢(プラーク)や歯石がつくことにより歯ぐきが炎症をおこすこと(歯肉炎)からはじまり、炎症がさらに他の歯周組織に広がっていきます(歯周炎)。正確な境界はありませんが、おおまかに4つに区分されますので、それぞれについて説明していきます。
歯肉炎
歯肉炎は炎症が歯ぐきに限局しており、他の歯周組織(歯槽骨・歯根膜・セメント質)は健康な状態を保っています。自覚症状はほぼなく、見た目もあまり変化はありません。しかし、炎症で腫れた歯ぐきの状態が続くと、歯と歯ぐきの溝(歯周ポケット)が深くなってきます。その結果、この歯周ポケットに残った歯垢や歯石を除去するのが難しくなってしまいます。したがって、歯肉炎の段階でしっかり歯垢・歯石を除去し、健康な歯肉に戻しておくことが歯周病の予防には、とても大切なのです。
軽度歯周炎
炎症が広がり、軽度の歯周炎になると徐々に歯周組織に影響を及ぼし、歯を支える骨(歯槽骨)が溶け始めてきます。しかし、この段階では自覚症状としてあらわれることは少なく、日常生活に支障をきたすことはほぼありません。しかし、歯槽骨が溶け続けると歯周ポケットはどんどん深くなって、歯垢・歯石の除去はさらに難しくなり、炎症がさらに広がっていく悪循環に陥ってしまいます。この軽度歯周炎の段階での早めの歯周治療が、その後の歯周組織の炎症・破壊を食い止める一番の予防法です。
中等度歯周炎
さらに歯周炎が進行し、中等度の歯周炎になると、歯を支える歯槽骨が少なくなってきます。症状としては歯肉の出血や腫れ、歯の動揺などがみられるようになります。この段階になると歯周治療をしても歯周病を完治させることが難しくなり、たとえ歯周治療がうまくいったとしても、歯根の露出など他の問題が残ってしまいます。しかし、この状態で放置すると、歯周炎はさらに進行し、重度の歯周炎となっていきます。
重度歯周炎
重度の歯周炎になると、歯を支える歯槽骨が半分以上溶けてなくなり、歯の動揺がさらに大きくなります。この段階になるとしっかり噛むことも難しくなり、さまざまな症状(歯ぐきが痛い、腫れる、口臭がひどい等)がでてくるようになります。また、治療も抜歯以外に選択肢がなくなります。
このように歯周病は、初期のうちは症状がなく進行してしまうことが多く、症状がでてから歯周病に気づいた時には、かなり進行していたなんてことも少なくありません。したがって、定期的に歯科医院などで歯周病の検査をし、自分の歯ぐきの状態を知ることはとても大事なことなのです。
現在、特に歯ぐきに自覚症状がないという方も、一度、歯ぐきの健診を受けてみてはどうでしょう。自分では気がつかなかった歯ぐきの状態を知ることができるかもしれませんよ。
一般社団法人 佐賀県歯科医師会
成人産業保健委員会副委員長 尾鷲 俊行
※ 次回は、平成30年3月頃公開予定です。
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