第18回:むし歯の原因と予防について
令和06年04月23日
むし歯の原因と予防について
現代日本人は歯を大事にする意識が高まり、むし歯がずいぶん減りました。しかし、歯磨きの重要性はみなさん認識しつつも、「やり方」とか「必要な道具」とか、あともう一歩踏み込んだ知識の浸透が不足しているように感じます。そのため、1日3回歯磨きしていてもむし歯になってしまう人が存在するのが現状です。
人が生まれると、数年のうちに口の中にむし歯菌が入り込み、定着してしまいます。むし歯菌は口に入ってくる糖分をエサとし、代謝産物として酸を排出します。その酸によって歯が溶ける異常のことをむし歯と呼びます。ですので、次の3項目がむし歯予防の核となります。
①食事制限(糖分制限)
「砂糖はむし歯の原因」ですが、砂糖以外の糖分もむし歯の原因で、炭水化物全般が歯に悪いと言えます。砂糖の摂取頻度を減らすのは有効ですが、炭水化物全般を食べないのは現実的でないので、それらが歯に接している時間を短くすることが実際の対処法と言えます。すなわち、食事の時間と回数を無駄に多くしない、食後は速やかに歯磨きをするということです。
②ブラッシングによるプラーク(菌の集合体)と食べカスの排除
一時期、「歯磨きは食後30分経ってから」と言われましたが、これはほとんどの人には当てはまりませんので、歯磨きは食後すぐで結構です。そして、歯ブラシはもちろん大事ですが、歯が隣同士接触している面にはブラシの毛先が当たらないので、デンタルフロスを併用する必要があります。使い方は、フロス→歯ブラシの順です。フロスが通らない形で歯科治療された部位には、歯間ブラシを使いましょう。
③フッ素による歯の強化
ブラッシング時に歯磨き粉を使う方が多いでしょうが、今はほとんどの商品にフッ素が入っています。ブラッシング後のうがいはごく軽めにし、歯磨き粉の味を残すようにしましょう。口の中に残留したフッ素が、むし歯予防に役立ってくれます。
また、歯磨きと食事という単純な話の他にも、歯にかかる異常な負荷でむし歯になる例も多いです。不良な噛み合わせ、食いしばる癖、寝ている間の歯ぎしりなどで歯に細かな亀裂が入り、そこからむし歯になります。原因によって、対処法が異なります。
そして、むし歯治療には再治療がつきものです。削った部分を埋めるのがプラスチックでも金属でも、歯とは大きく物性が違いますので、年数が経つと隙間や段差が発生し、汚れがたまります。その状態が長く続くと、再びむし歯になります。
むし歯のリスクも人それぞれで、個々のお口の状態に合わせたケアが好ましいです。自力で磨けない汚れは専門家に取ってもらい、むし歯は小さい内に発見し、古い修復物は適切なタイミングで作り直す。それを実現してくれるのが、かかりつけ歯科医院の定期受診です。
佐賀県歯科医師会 地域保健部
成人産業保健委員会 委員長 山田昭仁
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