第3回 周術期の医科歯科連携
令和01年05月20日
周術期の医科歯科連携
がん等の治療において術中だけでなく術前・術後の期間を含めた一連の期間を「周術期」と言います。その周術期において口腔機能管理、口腔ケアを行うことで、がん治療の苦痛を少なくして治療を計画通り行うことができます。
平成22年8月に、国立がん研究センターと日本歯科医師会間のがん患者歯科医療連携合意書調印式が行われました。それまでも静岡がんセンター等で周術期の医科歯科連携は行われていきましたが、この調印式を機に、病院と地域の歯科医院との協働が全国に広がっています。今ではがん治療だけでなく全身麻酔を必要とする手術にも広がっています。
口腔内は非常に多くの細菌が生息しており、歯垢の単位体積当たりの細菌数は身体中で最も多いと言われています。そうした細菌を全身麻酔時の挿管操作によって気管内へ侵入させたり、歯周病により血行性に体内に侵入することがあります。
また、口腔内においては疼痛などの自覚症状がなくても、むし歯やそれに引き続く根尖病巣、歯周病などがあり、周術期などで免疫能が低下してくると、疼痛や腫脹などの症状が発症することがあります。しかし原疾患の治療内容によっては、抜歯などの歯科治療そのものが難しくなることもあります。
がん治療の内容によって、お口に出てくる症状は大きく異なります。手術では傷口の感染や誤嚥性肺炎、抗がん剤を用いる化学療法では口内炎や味覚の変化やお口の渇きや粘膜の感染、放射線治療では口内炎や味覚の変化やお口の渇きやむし歯の増加やあごの骨の感染などがあげられます。
そこで重要になるのが専門的口腔ケアです。口の手入れをしっかり行うことで口腔合併症の予防や軽減につながり、がん治療を予定通りに行うことが十分可能となります。
がん治療、全身麻酔下での手術の前に、歯の治療や専門的口腔ケアを行うことで、気管内挿管時の歯牙破折や脱離などのリスクの軽減、さらに口腔内の衛生環境を整備することは経口摂取も早期に始めることもでき術後の在院日数の削減が報告されております。多くの報告から患者のQOL(生活の質)維持・向上に効果的であると言えます。
これまで病院に入院し、がんなどの手術を受ける場合、ほとんどのケースで術前に口腔内をチェックすることはありませんでした。手術に限らず、抗がん剤治療、放射線治療の前には、医科の主治医に相談の上、かかりつけ歯科医院で専門的口腔ケア、必要があれば歯科治療を受けましょう。
日本歯科医師会PRキャラクター「よ坊さん」 | 一般社団法人 徳島県歯科医師会 専務理事 松本 侯 先生 |
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