がん発生のメカニズム
●細胞が分裂するときの「コピーミス」で「がん」がはじまる
私たちの体は約60兆個の細胞でできており、細胞は絶えず分裂することによって新しく生まれ変わっています。細胞分裂は、細胞の設計図である遺伝子をもとにコピーされることで起こりますが、発がん物質などの影響で遺伝子が突然変異し、「コピーミス」が起こることがあります。このコピーミスが「がん」のはじまりです。 ただし、コピーミスが起きても、すぐにがんになるわけではありません。健康な人でも1日約5,000個のコピーミスが起こっているといわれています。通常、コピーミスで生まれた異常な細胞は、体内の免疫細胞の標的となり、攻撃されて死滅します。 ところが、免疫細胞の攻撃を逃れて生き残る細胞がいて、「がん細胞」となります。それらが異常な分裂・増殖をくり返し、10~20年かけて「がん」の状態になります。 |
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●がんは全身のどこにでも発生する
がんは、全身のあらゆる場所に発生する可能性があります。胃や肺、肝臓などの内臓はもちろん、血液や骨、皮膚などにできるがんもあります。 がんの名前は一般的に、「胃がん」や「肺がん」などのように、最初にできた部位の名前をとってつけられます。なかには「脳腫瘍」や「白血病」など、「がん」という言葉がつかないものもありますが、脳腫瘍は脳にできるがん、白血病は血液のがんで、いずれもがんの仲間です。 |
〈おもながんの特徴〉
※「女性のがん」については、こちらをご覧ください。 |
大腸がん
男女ともに近年、急増しているがんです。増加の背景には食生活の欧米化が考えられ、今後も増加すると予測されています。男女ともに40歳以降から増え始め、高齢になるほどリスクが高まります。進行すると、血便のほか、便秘や下痢をくり返すなどの症状が現れますが、初期には自覚症状はほとんどありません。
胃がん
塩分やピロリ菌が最大の危険因子とされ、塩分の濃い味を好む食習慣から日本人に多くみられます。現在50歳以上の日本人の多くはピロリ菌に感染しているといわれており、注意が必要ですが、近年はピロリ菌の新たな感染が減ってきています。早期の胃がんは無症状のことが多く、進行すると胃痛や胸焼けなどが見られることもあります。
肺がん
男女ともに死亡数の多いがんで、発見が遅くなるほど死亡率が高くなります。最大の危険因子は喫煙で、喫煙者が肺がんになるリスクは非喫煙者と比べて5~20倍ともいわれています。早期には自覚症状がほとんどなく、あっても咳や痰などかぜに似ているため受診するケースが少なく、健診などで見つかることが多くあります。
肝臓がん
多くは慢性肝炎から肝硬変へと進み、肝臓がんを発症します。日本人の肝臓がんのほとんどはB型およびC型のウイルス性肝炎によるものですが、アルコール性肝障害や非アルコール性脂肪肝炎(NASH)から肝臓がんになることもあります。
前立腺がん
男性特有の生殖器である前立腺に発生するがんです。50歳前後から増え始め、年齢を重ねるほど発症リスクが高まります。初期にはほとんど自覚症状がなく、進行すると尿が出にくい、尿の回数が増える、排尿後の残尿感などの症状が現れます。
乳がん
日本人女性がかかるがんのなかで最も多いがんで、乳房の乳腺組織にできます。20歳代から徐々に増え始め、40歳代後半から50歳代にピークを迎えますが、30歳代に急激に増加します。がんが5mm~1cmくらいの大きさになると、しこりとして触れたり、乳頭からの異常分泌、乳頭や乳輪がただれるなどの自覚症状があります。
子宮がん
子宮の奥(子宮体部)にできる「子宮体がん」と、子宮の入り口(頸部)にできる「子宮頸がん」があります。子宮体がんは40歳代以降、閉経前後に多く見られますが、最近は30歳代での発症も増えています。一方、子宮頸がんは、20~30歳代に急増しています。いずれのがんも初期には自覚症状がほとんどありません。
がんは、なぜ恐いの?
●がんは死亡率第1位の病気
がんは、あらゆる病気のなかでも最も死亡率の高い病気で、長年日本人の死因第1位を占めています。 また、がんが恐ろしいところは、初期にはほとんど自覚症状がないということです。そのため、健診などで発見されることが多く、発見されたときにはすでに進行していたというケースも少なくありません。 |
がんの原因は?
●危険因子の多くは生活習慣にあった
最近のさまざまな研究から、「がんは予防できる病気」であることがわかってきました。がんの危険因子の多くは生活習慣にあり、生活習慣の改善が、がんの予防につながるということです。がんのなかにはごく一部、遺伝性のものもありますが、遺伝要因よりも生活習慣要因のほうの影響が大きいと考えられています。 生活習慣のなかでも、最大の危険因子とされているのが喫煙です。喫煙は肺がんだけではなく、食道がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がんなど、多くのがんのリスクを高めます。さらに受動喫煙といって、タバコから立ち上る煙は、タバコを吸わない人にも肺がんなどの健康被害をもたらします。 食生活では、塩分のとりすぎは胃がん、野菜・果物不足は消化器系のがんや肺がん、熱すぎる食べ物や飲み物は食道がんのリスクを高めるとされています。近年、急増している大腸がんや乳がんなどは、食生活の欧米化が影響しているとされ、動物性食品への偏りも危険因子と考えられます。また、多量の飲酒は食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんなどのリスクを高めることがわかっています。 |
■がんの危険因子
- 喫煙
- 塩分のとりすぎ
- 野菜・果物不足
- 熱すぎる食べ物や飲み物の刺激
- 動物性食品のとりすぎ
- 多量の飲酒
●感染により発症するがんもある
がんのなかには、ウイルスや細菌などの感染によって発症するものがあり、肝臓がん、胃がん、子宮頸がんはその代表です。 |
■がんの原因となるウイルス・細菌
肝炎ウイルス | 肝臓がん |
ピロリ菌 | 胃がん |
ヒトパピローマウイルス(HPV) | 子宮頸がん |
がんを予防・改善するために
●がんの危険因子は生活習慣の改善で減らすことができます
がんを予防するための生活習慣改善でまず重要なことは「禁煙」です。喫煙習慣のある人は、家族や周囲の人を巻き込まないためにも、直ちに禁煙を実行しましょう。 食生活では塩分を控え、野菜や果物を積極的にとるようにして、バランスのよい食事を心がけましょう。お酒の飲みすぎはがんのリスクを高めるので、お酒を飲む人は適量を守るようにしましょう。 運動する人や、仕事や日常生活でよく身体を動かす人は、がんになるリスクが低いことがわかっています。日常生活での活動量を増やすとともに、適度な運動を習慣として行いましょう。ただし、激しすぎる運動はがんを誘発する活性酸素を増やすことがあるので、ウォーキングや水泳などの有酸素運動がおすすめです。 がんは、糖尿病や高血圧などと同じ「生活習慣病」です。積極的に生活習慣を改善して、がん予防につとめましょう。 |
■生活習慣改善のポイント
●早期発見・早期治療でがんは治せる
日本では2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで死亡するといわれています。このようなことを聞くと、「がんになったら誰もが死を待つほかない」と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。現在は検査法や治療法が進み、早期に発見し、早期に治療すれば「がんは治せる病気」になっています。そのためには、健診やがん検診を定期的に受けることが重要となってきます。 下表の大腸がんの便潜血、胃がんのX線検査、肺がんのX線検査、喀痰(かくたん)検査は、科学的に有効であるとして厚生労働省が推奨するがん検診です。40歳以上の方は、年1回受診するように心がけましょう。 |
●こんな検査でわかります
がんが発生する部位によって、さまざまな検査方法があります。がんは一般的な健診で見つかることも多いですが、早期にがんを見つけるためには、定期的に「がん検診」を受けることが重要です。 各検査項目の詳細については、こちらをご覧ください。 |
■がんを調べる検査の例
大腸がん | 便潜血、大腸内視鏡検査など |
胃がん | 上部消化管X線造影撮影、胃内視鏡検査など |
肺がん | 胸部X線検査、喀痰(かくたん)検査、肺がんCT検査など |
肝臓がん | 肝炎ウイルス検査など |
前立腺がん | PSA検査(腫瘍マーカー) |
※がんについては、「季節の健康情報:3月 日本人のがん予防」もご覧ください。
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