第4回 手のしびれの原因と対処法
令和04年02月08日
外来診察していると「手がしびれるんですが、脳が原因でしょうか?」という訴えで来院する方が結構いらっしゃいます。
「もう2週間もしびれているなら手遅れですよ」と冗談まじりに診察を始めるのですが、本当に脳梗塞であることがあるので我々も注意しています。
手のしびれの原因の中で、外傷以外で他に気をつける病気には頚椎での神経圧迫、肩、上腕などでの腫瘍による神経圧迫、肘部管症候群、手根管症候群などがあります。
今回はその中で最もよくある手根管症候群について述べます。
手のひらの付け根の深部に手根管という骨と靭帯で囲まれたスペースがありこの中に正中神経と指を曲げるための9本の腱が走行しています。
更年期や妊娠、出産時に女性ホルモンの乱れの影響で手根管の中で滑膜が腫れて神経が圧迫され症状が出現します。手指の使い過ぎや透析治療を受けている方にも生じることが知られています。
症状の特徴は、しびれは母指から薬指の半分まで生じることが多く、他に朝手がこわばる、夜間や明け方になるとしびれ痛みが強くなり目が覚める、手を振ると症状が治るなどです。症状が進むと母指の付け根の筋肉が痩せてきてツマミ動作がしにくくなったり、指先の感覚が鈍って物を落としたりするようになります。
治療法は、手指を使い過ぎている方は使用頻度を調整したりサポータなどを使って刺激を避けるようにします。薬ではビタミンB12を内服することが多く、湿布など外用薬を使用することもあります。痛みがある程度強い場合に神経周囲に薬液を入れるブロック注射やさらに筋萎縮が進んできている方には手術治療を選択します。手根管の蓋の部分になっている靭帯を切開することで内圧を減少させることが効果的であり、通常外来手術として行い、内視鏡下に手術する施設もあります。
進行しても手指が動かなくなることはありませんが、知覚が衰え手指の力が低下するので日常生活で思うように使えなくなります。しびれを感じたら早めに受診しましょう。
名越整形外科医院 院長 名越 充