令和03年11月08日
「五十肩だからほっといても治るよ」、「五十肩だからいつかは痛みがとれると思っていました」等という言葉をよく耳にします。
大体中年になると筋肉や骨関節の加齢的変化が始まりますので体のあちこちが痛くなることがあります。皆さんが五十肩と言っている肩の痛みはこの年齢層に生じる広い範囲のものです。
しかし、その中に本物の五十肩「いわゆる五十肩(以下凍結肩)」があり、診断、治療に難渋します。すぐに治る肩痛は凍結肩ではないことが多いです。
凍結肩は骨折や腱板(肩を動かす重要な腱)などの損傷がなく肩痛が生じ徐々に動きが悪くなってゆく病気です。中年になってくると関節を包み込んでいる関節包、靱帯、筋腱の伸縮性が乏しくなり、ほんの少しのストレスで傷むことがあり、炎症が生じて縮んで硬くなり始めます。痛みのため動かせなくなることでさらに症状は進行してゆきます。個人個人の痛みの感じ方、糖尿病や高脂血症などの基礎疾患、女性ホルモン異常などが進行に影響します。一旦固くなってしまうと寛解に1年以上かかることが稀ではありません。痛みがとれても動きの制限が残存する場合もあります。
早いうちに治療を始めた方が早期に治癒しやすいことがわかっています。治療の根幹はリハビリテーションです。肩だけでなく肩甲部、肋骨、脊椎、股関節などの動きも改善する必要があります。除痛には鎮痛剤などの内服、必要に応じて炎症を抑える関節内注射や組織間の癒着をとる特殊な注射を用います。中には難治性のものもあり、手術を要することがあります。
同じ年齢層でよく生じる肩痛に「腱板断裂」と「石灰性腱炎」があります。腱板断裂は外傷でも使い傷みでも起こります。運動時痛や夜間痛が特徴です。手術治療が必要なこともあります。石灰性腱炎の急性症状は突然生じる激痛が特徴です。注射治療が効果的です。慢性症状は硬くなった石灰が運動時に関節内で衝突する痛みです。内服薬や注射で緩和しない場合は手術治療を行います。
肩周辺の痛みにはいろいろな原因がありますが、放置せず早めに医療機関を受診してください。
名越整形外科医院 院長 名越 充