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メールマガジン68号(2017年7月5日)

「認知症(高齢者ドライバー)について」 北海道医師会 

 

 平成19年の道路交通法改正により、平成21年6月1日から運転免許証の更新を受けようとする者で更新期間満了月における年齢が75歳以上の者は、満了月前6カ月以内に「認知機能検査」を受けなければならない事となり、すでに実施されています。しかし高齢者が関与する交通事故がその後も多発していること等から、改正道路交通法が平成27年6月17日に公布され、平成29年3月12日より施行されました。
 75歳以上の高齢者は免許更新時に全員認知機能検査(公安委員会が行うスクリーニング)を受けます。この検査(100点満点)で76点以上を「心配ない」=3分類、49~75点を「少し低い」=2分類、49点未満を「低い」=1分類と区分されます。3分類の者は高齢者講習(合理化=実車指導など2時間。手数料4,650円)を経て免許が更新されます。2分類の者は高齢者講習(高度化=実車指導・個別指導等で3時間。手数料7,550円)を経て免許が更新されます。1分類の認知機能低下を強く疑う者も、特別な事情がない限り、高齢者講習(高度化=実車指導・個別指導等で3時間。手数料7,550円)を受講後、免許は更新されます。しかしその後、臨時適正検査か診断書提出命令(3か月以内に提出)を受けます。診断書提出命令を受けた高齢者は診断書作成(自費になり各医療機関で料金が異なります。概ね5,000円~1万円)が可能であるとした医療機関などを受診する事となります。
 臨時適性検査(公費)は公安委員会が指定する認知症に係る専門の医師のいる医療機関で行われます。これにより認知症でないと判定されると、運転の継続が可能となります。診断書提出命令は内閣府令で定める要件を満たす医師(認知症に関し専門的な知識を有する医師)または認知症に係る主治医が作成したものとされています。日本医師会は、かかりつけ医の先生方にもご協力いただき、かかりつけ医で判断に迷う場合には専門医に依頼するという形になると考え、平成29年3月に診断書作成における具体的手引きを作成し公表しました。
 診断書により認知症と判定されると、免許停止または免許取り消しとなります。また免許を更新した者でも一定の違反行為(75歳以上の運転者が、認知機能が低下した時に起こしやすい違反行為18類型)をすると、臨時認知機能検査(簡易スクリーニング)を受け1分類と判定された場合は、必ず臨時適性検査または診断書提出命令の対象となり、認知症ではないと診断されれば臨時高齢者講習(実車指導1時間・個別指導1時間。手数料5,650円)を受け運転を継続できることとなります。今回の改正による1分類の対象者数は全国で5万人、道内で年間2,200人程度と想定されています。
 診断書提出命令を受けて記載する診断書様式には、画像診断や、血液検査も含まれ、かなりの金額と日時がかかることが想定されます。医療機関を受診すると、「認知症疑い」で検査を受けます。これは保険診療となり、画像診断を含め概ね10万円程度と思われます。
 平成28年12月22日北海道医師会は北海道警察と協議を行い、認知症を専門とする医師が不足している事から、全会員へ「手上げ方式」により協力医を募集し、これらの結果を集約して北海道警察に医療機関一覧を提出しました。現在、道内には18の認知症疾患医療センターが指定されていますが、道内21の2次医療圏全てを網羅してはいません。したがって診断書記載可能な医師が、数多く「手上げ」をして頂く事を期待しておりました。
 平成29年5月現在の協力医と適性検査医の状況は、協力医67名中9名が適性検査医として登録しており、適性検査医41名のうち9名が協力医として登録しているため、診断をして頂ける実人数は99名となっております。道内の対象者に不便がないよう、今後も協力医が増えることを期待しております。
 日本老年精神医学会では、認知機能低下による運転不適格者と「認知症」であるとの診断は必ずしも同義ではなく、「認知症」と一括りにして運転を制限するのではなく、その個人が生活する場の特性を踏まえて、現実的な能力評価に根ざした判断が必要とした提言を警察庁や厚生労働省に提出したとの事です。今後も各学会を中心に要望が出てくる可能性があります。
 75歳以上の高齢者の交通事故を未然に防止するのは極めて有意義ですが、認知機能の低下を来している75歳未満の者をどうするかも大きな問題です。やはり家族の説得による早めの免許証自主返納が最善であり、市町村は返納後の種々の代替策も周到に準備しなければならないと思われます。