●よく噛むとどうなるの?
・噛むことは肥満防止になる
食べ物をよく噛んで味わうことを咀嚼といいます。実際、みなさんはどの程度行っているでしょうか。
最近の食事は、ファ-ストフードなど、軟らかい食べ物を好んで食べる傾向があり、食事にかける時間が短くなり、昔に比べると噛む回数が減ったと言われています。食事から栄養を摂ることで生きている私たちにとって、よく噛むことは、健康に深く関わっています。
よく噛んで食べることは、生活習慣病の原因の一つである肥満の予防になります。よく噛むことによって、脳は少量でも満腹感を感じやすくなり、食欲が抑えられます。食事のときは、「一口30回噛む」ように心がけましょう。
さらに、よく噛むとだ液がたくさん出ます。このだ液は、口の中を清潔に保ち、むし歯や歯周病の予防になります。また、だ液が多いと消化を助けてくれるので、栄養の吸収がよくなります。
・よく噛んで食べるための7カ条
毎日どれか一つでも続けて、よく噛んで食べることを習慣づけましょう。
- 一口30回、噛んで食べる
- 右で10回、左で10回、両方で10回、噛んで食べる
- 飲み込もうと思ったら、あと10回噛む
- 食べ物の形がなくなるまで、よく噛む
- 先の食べ物を飲み込んだら、次のものを口に入れる
- 口に食べ物が入っている間は、水分を摂らない
- 一口食べたら、箸を置く
(日本歯科衛生士会『「食べ方」を通した食育の推進 噛ミング30を目指して!』)
●噛むことの効果と秘訣
・よく噛むことの効果
噛むことのメリットはほかにもあります。よく噛んで食べることで、食材本来の味を感じることができます。また、あごを開けたり閉じたりするため顔などの骨や筋肉が動き、これにより血流が増加し、脳に酸素と栄養が送られるため、脳細胞の働きが活発になり、反射神経や記憶力、集中力、判断力などがよくなります。子どもの知育を助け、高齢者では、認知症の予防にもなります。
さらに噛む動作によってあごや口のまわりの筋肉を動かすことは、表情を豊かにしたり、きれいな発音で話すことにもつながり、イキイキとした表情でのコミュニケーションの後押しとなることが期待されます。
・噛み応えのあるメニューをプラス
噛むことが大切なこととはわかっていても、食事のときに毎回一口30回噛むのは、なかなか大変です。特に噛み応えのないものは、すぐに飲み込んでしまうので、噛む回数が自然と増える食材やメニューを選ぶこともポイントです。
ごぼう、たけのこ、切り干し大根など食物繊維の多いものや、イカやタコなどの弾力性のあるものでも噛む回数は増えます。また、料理の際に食材を大きめに切ることで、噛む回数を増やすことができます。野菜も生で食べると噛み応えのあるものが多いので、生野菜のサラダなどもおススメです。
食べ物が口にある間はスープや飲み物などの水分は控えるようにしましょう。よく噛まずに水分で流し込んでしまうと、だ液の分泌が抑えられるだけでなく、噛み砕けていない食べ物を消化するため、胃の負担が大きくなります。
●よく噛むためにお口のケアも大切です
・毎日のセルフケアは丁寧に
よく噛むことができる丈夫な歯を維持するために、毎日のセルフケアは十分に行いましょう。
歯と歯ぐきのケアの基本は、正しい歯みがきです。歯ブラシを鉛筆のように持って歯面に当て、小刻みに往復させます。歯垢のたまりやすい、歯と歯の間や、奥歯の噛み合わせなどは重点的に、一本一本丁寧に磨くことが大切です。また、デンタルフロスや歯間ブラシも使って、歯と歯の間の汚れもきれいにするようにしましょう。
こまめにケアしていても、いつの間にかむし歯や歯周病になっていることはあります。定期的に歯科医院でチェックを受けて、お口のケアに努めましょう。
[監修]東京大学付属病院アレルギーリウマチ内科 医師・医学博士
女子栄養大学大学院 成人・高齢者保健学 非常勤講師
関谷 剛