心筋梗塞は冬季に多く発症する傾向があることが知られていますが、連日厳しい暑さが続くこの時季にも油断は大敵。暑さでたくさん汗をかくと、体内は水分不足となり、血液が濃縮されて血栓がつくられやすい状態になり、特に高血圧や糖尿病、メタボリックシンドロームなど動脈硬化のリスクが高い人では、心筋梗塞につながることがあるのです。
8月10日は、暑い夏の一日が「こころとからだの休日」となるよう願って制定された「健康ハート(810)の日」。暑さが心臓への負担をまねくこの季節こそ、「ハート(心臓)」の健康を振り返る機会にしてみましょう。
ところで、心筋梗塞とはどのような病気でしょうか?
心臓は「心筋」と呼ばれる筋肉でできており、心筋に酸素や栄養を運ぶ太い動脈を「冠動脈」といいます。冠動脈の内部が、動脈硬化(血管が弾力を失い、もろくなる状態)などの影響で狭くなったり塞がったりしてしまうと、心筋に酸素や栄養が届かなくなり、狭心症や心筋梗塞といった心臓病を引き起こします。冠動脈の内腔が狭くなり、血流が流れにくくなった状態が「狭心症」。そして、狭くなった冠動脈の動脈硬化がさらに進み、血栓によって血流が途絶えてしまうのが「心筋梗塞」です。血流が絶たれることで心筋が壊死(局地的に組織が壊死してしまうこと)し、その影響で心停止に至ることもあります。壊死した心筋は元に戻ることはありません。日本では実に毎年3万人以上もの人が急性心筋梗塞によって亡くなっています。
時に命にかかわる心筋梗塞は、症状に早めに気づいて対応することが何より大切です。
心筋梗塞の主な症状
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人によっては痛みがはっきりしなかったり、症状が軽いこともありますが、自覚症状の強さと病気の重症度は必ずしも一致するとは限らないため、「このくらい大丈夫」「朝まで様子をみよう」と我慢するのは禁物です。上表のような症状があれば、迷わず救急車を手配するなど、すぐに受診するようにしてください。もしも救急車を呼ぶか判断に迷うようなら、まずは各自治体が開設している救急相談窓口(症状の緊急性などについてのアドバイスを受けられる)に連絡することも可能です。いざという時に慌てないように、連絡先を確認しておきましょう。
夏季に起こる心筋梗塞は、発汗・脱水を契機にして発症することが少なくないことから、比較的年齢の若い人(50歳未満)にも発症しやすいことが特徴です。炎天下での活動やスポーツの前後に限らず、屋内でも意識して水分摂取を心がけましょう。
また、喫煙習慣や肥満、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は、心筋梗塞の危険因子として知られています。該当する人は、こまめな水分摂取はもちろん、下表を参考に、できることから生活習慣の改善を始めてみましょう。
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[監修]新小山市民病院 理事長・病院長 島田 和幸