夏本番となる7月。大人も子どもも待ちに待った夏休みシーズンの到来です。長い休みを利用して、家族や気の合う仲間と遠方に出かける計画のある方も多いのではないでしょうか。
楽しい予定で満たされた旅程表に心が踊りますが、特に6時間以上同じ姿勢で移動する方にぜひ注意してほしいのが「ロングフライト血栓症」。重症になると命にかかわることもあるこの病気。予防策をしっかり講じて、夏の旅を快適に楽しく過ごしましょう。
ロングフライト血栓症は、文字通り長時間のフライトに伴って起こる病気で、「エコノミークラス症候群」とも呼ばれていますが、エコノミークラス以外の席でも起こりうることから、日本旅行医学会により「ロングフライト血栓症」と呼ばれています。
航空機内は非常に乾燥しているため、体から水分が失われやすく、血液の粘度が増して血栓がより作られやすいと考えられていますが、長時間の自動車や列車、船舶での移動やデスクワークの際にもまれに起こることがあり、同様に注意が必要です。
長時間の航空機利用(フライト)では、座りっぱなしで足を動かす機会が減ることから、足の血流が悪くなり、ふくらはぎの奥の静脈に血栓(血のかたまり)ができることがあります。この状態を「深部静脈血栓症」といい、血栓が静脈を塞いでしまうほどの大きさになると、足のだるさや腫れ、鈍い痛みなどを感じます。通常は片方の足のみに症状が現れます。
この血栓が、急に歩行を開始するなどのタイミングで血管壁からはがれ、血流に乗って心臓を通過し、さらに肺の血管に到達して詰まった状態を「急性肺血栓塞栓症」といいます。生命維持に重要な呼吸の機能が障害されるため、突然の呼吸困難や胸痛などが起こり、時に命にかかわる重篤な状態をまねきます。
「ロングフライト血栓症」とは、長時間のフライトが原因で起こるこれらの血管病の総称です。
近年では、2016年に発生した熊本地震の影響で、自動車内で寝泊まりをしていた人が、同様のメカニズムで急性肺血栓塞栓症を発症し、病院に搬送されたり亡くなったりしたニュースは、記憶に新しいのではないでしょうか。 |
時に命を奪うこともあるロングフライト血栓症ですが、ちょっとした心がけで発症のリスクを下げることができます。
ロングフライト血栓症 7つの予防策
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ロングフライト血栓症は多くの場合、到着間際の機内や到着先の空港で起こります。
高齢者や大きな手術を3か月以内に受けた人、肥満の人、妊娠中や産後1か月以内の人などでは特に注意が必要です。また、旅行後しばらくしてから起こることもあるため、2週間ほどは症状の発生に気を配りましょう。片方の足の腫れや痛み、胸痛や呼吸困難など、疑わしい症状があれば、迷わず受診しましょう。
[監修]新小山市民病院 理事長・病院長 島田 和幸