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櫃本氏:第1回「健康とは ~生き方・死に方を考える」

第1回「健康とは ~生き方・死に方を考える」

愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長

櫃本 真聿氏

 

 日本は高齢化において世界の先頭を走っています。“団塊世代”がこれから20年後には80代となり、まさに前人未踏の超高齢社会を世界に先駆けて経験することになります。社会保障制度の改革はもちろん重要課題ですが、医療や行政だけでは到底対処できない事態に直面しています。国民一人ひとりが医療や福祉制度への“依存”を改め、自分がどう生きて、どう死んでいくのかを自ら決める時代が到来したことを十分認識する必要があります。

 医療の進歩にともない、自宅での“出産や看取り”は激減し、生や死との対面が生活から隔離され、医療機関の中で行なわれるようになりました。「安全・安心」の充実が図られたとは言いながら、そのために日常では「生」や「死」について考える機会がほとんどなくなってしまいました。医療機関に運ばれてはじめて、自分の「生」「死」について、追い詰められた状態で考えさせられているのが現状だと思います。

 「死」は100%誰にでもやってくるのです。いつ訪れるか分からない「死」ではありますが、日常から切り離さず「死」というゴールに向かって、自分がどんな生き方をしたいのか考えることが、高齢化先進国の住民として最も大事なことではないでしょうか。

 そもそも「健康」とは何でしょう。「健康日本21」の目的には、“健康寿命の延伸”と明記されていますが、実は健康そのものの定義が曖昧なため、その評価ができないのが現状です。血圧や血糖値が正常という、数値で判断された健康が本当の健康でしょうか。たとえ障害があっても寝たきり状態だとしても、健康だと感じられるその時が健康なんだと思います。何も医療者から健康・不健康のレッテルを貼られる必要はないのです。「健康とは幸福」と明言される方もおられますように、健康はさせられるものではなく自ら感じるべきものなのです。

 自分らしく、快適に人生を送る。こうした目的を持つことで、日々の生活に主体性が生まれ、それが健康を感じられる大きな力となるのです。

 これからの超高齢社会に大切なことは、自分の生き方・死に方を自ら考えること。「死なないため」ではなく、自分らしい生き方・死に方をするための健康づくりや疾病管理を考えることだと私は思います。そのためには、医療に依存することのない、「医療を活用する」という意識を是非持っていただきたい。「満足できる人生だった」と言えるような生き方をすることが、長寿力を養うということになり、超高齢社会を迎え入れる最も有効な方法だと考えています。