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櫃本氏:第3回「医療の目的の変化」

第3回「医療の目的の変化」

愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長

櫃本 真聿氏

 

 20世紀は西洋医学の急速な進歩に伴い、医療の最大目的が“命を救うこと”に置かれ、診断・治療が中心の医師主導型の時代が長く続きました。その後治療できる疾患が増えた一方、高齢化の急速な進行や生活習慣病の増加に伴い、治らない“共存”すべき疾患も目立ってきました。そのため20世紀末には、“患者満足度・QOL(生活の質)の向上”がキーワードとして強調され、医療者主導の「良かれ・してあげる医療」から、“安心・選択”といった「患者の希望に沿える支援としての医療」が重要な視点へと変化してきました。

 そして21世紀に入ってからは、医療者と患者とのパートナーシップが強調され、これまでの医療の範疇を超えて、生活全般にわたる協働が重要とされるようになりました。生き方・死に方を患者自身が選択・決定できるような、生活とつながった医療環境が必要になったのです。しかし実際には医療の目的の変化に対応した医療者と患者の関係には至っていないのが現実です。

 医療機関は「急性期」「亜急性期」「回復期」「維持期」などといった機能分化が進み、互いの連携は極めて重要課題となり、その範囲は保健・福祉さらに地域生活全般へと広がってきました。つまり医療機関はより地域に根付いた資源として位置づけられるようになったのです。「施設完結型から地域完結型へ」のキャッチフレーズは、医療機関どうしの連携にとどまらず、医療機関が地域特性を踏まえた上で、他の地域資源とも連携して、患者の真のニーズを実現するために“協働”することが求められるようになりました。さらに、患者の真のニーズに応えるべく、“パートナーシップ・生活支援・エンパワメント(内なる力の賦活化)”などをキーワードに、診断・治療を超えた生活全般を考えた対応が重要になりました。すなわち、患者とのコミュニケーションはもちろんのこと、多くの地域資源との連携・協働による患者の“ 生き方・死に場所を決める”方向へと、医療はこれまでの価値観の急激な変化が求められるようになりました。医療者はもちろん、住民自身がこの変化を理解し十分踏まえて医療を活用する必要があるのです。 

 

 


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