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櫃本氏:第6回「医療への“依存”から“活用”へ」

第6回「医療への”依存”から”活用”へ」

愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長

櫃本 真聿氏 

 

 筆者は診察が目的ではなく、患者さんと対話するために、毎週病棟内を回診しています。入院したばかりの患者さんには、「入院は退院するためですよ」「病気と立ち向かうだけではなく、どういう状況になったら退院したいか、医療者に本音を伝えてくださいね」とお話します。しかし、退院が近くなった患者さんに「退院したら、何がしたいですか?」と尋ねると、ほとんどの方が「考えていません」と返事をされます。医療の進歩とともに医療への依存度が増しています。それは、自分の生・死を医療に委ねるということです。医療によって自分の人生が著しく影響を受けるのです。このような状態で、患者さんが自分らしい人生を送れるでしょうか。是非医療に頼るのではなく、自分らしい人生を全うするために、医療の活用を考えてみてください。

 それにはまず、自分がどう生きたいのかを日ごろから考えておくことが肝要です。もしも病に倒れてしまったらどうしたいのか、どうして欲しいのかを、日頃から家族や仲間と一緒によく話し合っておいて下さい。

 次に、“総合病院志向“を改めることです。言うまでもなく総合病院のような急性期病院は高度専門的な診断・治療を行うところです。限られた期間に限られた疾患に対処するための機関であり、そこは患者さんと医療者が生活全般にわたって継続的なコミュニケーションをするには難しいところなのです。医療を活用するには、信頼し相談できる“かかりつけ医”を身近に見つけることが一番です。自分がどんな生き方・死に方をしたいのかを分かってくれている主治医と相談しながら、必要に応じて専門機関を利用することが、最も良い方法だと思います。

 また普段から、自分の周囲にどのような資源があるかを知っておくことも必要です。自分らしい人生を送るために役に立つ制度や施設などを知っておくとともに、地域の中でお互いが助け合える関係性を作ることも大切です。

 患者さんが具体的な希望を言ってくれることで、医療側は希望を実現するためにどのような支援をすることが望ましいのか、明確な方針を提示することができます。患者さんが目標を持つことで、患者さん自身の内なる力が引き出される(エンパワメント)相乗効果により、医療側も適切な治療が行えます。またそうすることで、患者さん自身の治癒力も向上するのです。

 患者さん自らが目標を持ち、家族や医療者等とそれを共有し、その実現に向かって協働することにより、お互いの持っている“力”を発揮すること。こうして医療を活用し、自分らしい生き方を目指していただきたいと願っています。

 


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