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櫃本氏:第12回「健康の義務化」

第12回「健康の義務化」

愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長

櫃本 真聿氏

 

 特定健診が始まって約3年半、メタボリックシンドロームいわゆる“メタボ”はずいぶん普及しました。またダイエット関連商品の売れ行きも好調で、何より私の周辺に明らかに努力してやせた方が増えました。確かに健康志向は急速に高まってきたように思います。一方“格差”は健康分野でも拡大し、健康に悪いと知りつつ、運動不足、高カロリー食、喫煙などを続けている人も少なくなく、二分化の状況を呈しています。

 特定健診では、“内臓脂肪蓄積”に着目し「腹囲」を指標として導入したことは、極めて特徴的でした。欧米でも腹囲が測定されることはありますが、あくまで医療者と患者の一対一で、日本のように集団健診で、半ば強制的といった国民的事業として測定するようになるとは・・・ある意味まだまだ日本の国力は凄いなと痛感する次第です。

 高血圧や喫煙などの健康危機要因を差し置いて、なぜ腹囲が優先されるのか? 男性が85センチ以上なのにどうして女性が90センチ以上なのか?・・・腹囲を指標にすることへ、多くの指摘がありました。内臓脂肪を正確に測定するにはCTスキャンのような検査を使わなければ把握できないし、腹囲よりもBMI(身長と体重から肥満の度合いを評価する指標)の方が、内臓脂肪との関連性が高い、さらには腹囲と健康指標との関連性がそれほど明確ではないなどと言った、批判も少なくありませんでした。にもかかわらず、どうして腹囲を計り続けるのか? その答えのポイントは、腹囲は本人にとってわかりやすくまたその増減を意識しやすい、つまり腹囲が増えると言うことは、健康管理意識が低いからという自己責任を促しやすいところにあります。

 特定健診の一番の狙いは、糖尿病の重篤な合併症である腎不全を予防し、ひいては多額の医療費を要する腎臓透析患者を減らすことでした。日本の国民皆保険制度は、世界に冠たる「もっとも医療にかかりやすい環境」を保証しています。しかし安心感が得られる一方で、過剰依存を助長し、日頃の自己健康管理をおろそかにするといった問題があります。自ら気をつけていようがいまいが、支払う保険料が同じであることはかえって不平等であり、生活習慣病は自業自得、太っている人は自己責任のもと、将来的にはそれ相応の保険料の負担をすべきだという考え方も生じています。

 医療費はいくらかかっても、命の問題だから・・・とは言っていられない厳しい現実に直面しています。消費税の話題が総理大臣交代の度に登場するのは無理のない話です。“健康の義務化”という言葉は、冷たいように感じますが、しっかりと受け止め、国民の義務として医療費を無駄使いしない、自らの生き方死に方を考え行動しなければなりません。

 


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