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原瀬氏:「糖尿病と歯周病の深い関係」

糖尿病と歯周病の深い関係

医療法人原瀬歯科医院理事長

原瀬 忠広氏

 

 「寝ても疲れがとれない」「足がよくつる」「目がかすんで見えにくくなった。」「何を食べても味がしない。美味しく食べられない。」「口が渇いて、喉が渇く。」「歯茎がよく腫れて、噛みにくくなった。」など思い当たる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
 どれも糖尿病や歯周病の典型的な症状です。
 この「歯周病」が「糖尿病」の第6の合併症として知られるようになってきました。
 糖尿病と歯周病は全く病態の異なる疾患ですが、その背後には予想もしなかった多くの類似点が潜んでいることがわかってきました。また、この2つの病気は一度罹ると元には戻らないという大きな特徴があります。つまり、一度罹ってしまうと体の重要な機能が失われていくということです。糖尿病も歯周病もその進行は音もなく忍び寄り、気付いた時には「事、既に遅し」というように、重症化するまで目立った症状が出現しないことが多いようです。「サイレントキラー」と言われる所以です。

 また、最も大きな類似点は「食」を中心とする生活習慣に影響を受けることです。1型糖尿病や特殊な急速進行性歯周炎や若年性歯周炎などは遺伝的な要因や免疫学的な要素にも左右されますが、両疾患とも発症年齢が40歳前後から増加傾向にあることや家族歴がみられること、そして糖尿病患者(特に2型)の多くは歯周病にも罹っている方が多くみられるなど共通の特徴があります。糖尿病は代謝疾患であり、歯周病は感染症であるという全く異なるものですが、「血管」へのダメージという点では両者とも「血管症」といえる疾患ではないでしょうか。
 糖尿病は血管障害や神経障害を特徴とする疾患ですが、口腔内においても舌の知覚異常や歯周組織の循環障害、微小血管障害がおこり歯周病をはじめ口腔乾燥症や味覚障害などを惹起しやすくなると考えられます。口腔内のプラークの停滞という歯周病原因菌の活動の場を提供させないことで歯周組織の破壊環境のお膳立てをくいとめ、きめ細やかなケアにより全身的、局所的な環境を改善することが重要です。糖尿病ではフットケアなどが必須なものとして知られていますが、歯周病が合併症としての位置づけであるならば、オーラルケアも必須なものとして位置づけされるように啓発していく必要があります。

 「生活習慣」によって引き起こされる病気は初期のうちは、ほとんど症状がみられません。
 しかし、体の中では様々な臓器や器官そして血管などが声を上げられないで悲鳴をあげています。
 「食習慣」「ストレス」「喫煙」「睡眠」「生活環境」等の問題を探ることによってリスクを軽減し生活習慣を変えることが必要ですが、正しい生活習慣を持続することは一人では難しいことです。内科医と歯科医、様々な医療スタッフがチームでサポートし一人一人に合わせた医療が今後は必須なものとなることでしょう。今、糖尿病やその予備軍といわれている方々が毎年50万人ずつ増えていると云われております。これからは糖尿病や歯周病に罹ってからではなく、生まれる前のお母さんのお腹にいる時からの生活習慣から見直す必要があるといえます。基本である「食」については1日○○○Kcalだけではなく、どのように味わい、咀嚼し、食生活の質を高めていくかが重要となります。健やかに育ち、健やかに老いていくことを目指した医療を実現したいと考えています。