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北海道支部

北海道医師会:2026年10月 「尿失禁について」

令和8年10月1日

自分の意思とは関係なく尿が漏れてしまうことは大変なストレスです。最近はテレビCM等の効果もあって尿取りパッドや紙パンツを使用することへの抵抗は薄れ、その品質も向上してドラッグストア等で手軽に手に入るようになりましたが、経済的な負担もありますし、できればそのようなものにはお世話にならずに済ませたいものです。ここでは泌尿器科外来に相談に来られる尿失禁のうち、代表的なものを3つほど挙げ、その対処法についてアドバイスしたいと思います。


1. 腹圧性尿失禁
咳やくしゃみをした時、重い物を持ち上げた時、走ったりジャンプした時など、お腹に力が入った時に尿が漏れてしまうのが腹圧性尿失禁で、女性の尿失禁の中で最も多いものです。骨盤底筋という尿道括約筋を含む骨盤底の筋肉が緩むことが原因であり、加齢や肥満、出産を契機に出現したりします。症状が重くて手術が必要となる場合もありますが、原因が骨盤底筋の筋肉が緩むことですから、この筋肉を強くすることで改善することもあります。骨盤底筋体操には様々なやり方がありますが、ここではそのうちの一つでNHKの番組で取り上げていた簡単なトレーニングを紹介しましょう。まず両足のかかとを合わせて、つま先を90度に開いてまっすぐ立ちます。その姿勢を保ったまま内腿やお尻の筋肉をギュッと中央に寄せるように力を入れ、その後ゆっくり緩めます。これを1回として1日合計30回を6週間続けることでその効果が期待できます。これ以外にも様々な骨盤底筋体操がありYouTube等で情報発信されていますので、気になる方はぜひとも検索の上お試しください。大切なのは根気よく続けること。肥満の方は減量するだけで効果が期待できることもお忘れなく。


2. 切迫性尿失禁
急に強い尿を催し(尿意切迫感)、我慢できずに尿が漏れてしまうのが切迫性尿失禁です。乗り物に乗っている時、自宅マンションのエレベーターを待っている時などすぐにトイレに行けないような時に起きるので、外出を控えるようになる方もいます。洗面の最中など水に触れた時に誘発されることもしばしば。多くの場合、特に原因がないのに膀胱が勝手に収縮してしまい、尿意切迫感や切迫性尿失禁をきたしてしまうのです。男性の場合は前立腺肥大症が原因になっていることもあります。対策としては前述の骨盤底筋体操や尿意を我慢する膀胱訓練などの行動療法がありますが、治療効果の優れた薬剤が出ているので、思い切って泌尿器科などの医療機関を受診するのはいかがでしょうか。尚、現在はスイッチOTC医薬品として市販されているものもありますので、医療機関を受診するのはちょっと、とお思いの方は最寄りの薬局で薬剤師の先生に相談されるのもいいかもしれません。


3. 排尿後尿滴下
いわゆる追っかけ漏れというものです。排尿後自分の意思と無関係に尿が数滴垂れる症状であり、男性に多く見られます。その理由は男性尿道の解剖にあります。男性が排尿する時は前立腺直下の尿道括約筋が緩み、排尿を止める時はその尿道括約筋が締まるわけですが、その先には球部尿道と振子部尿道という15cmほどの尿道が続きます。立位で排尿する時はズボンのファスナーを下げて排尿していると思いますが、排尿後陰茎を振って尿道に残っている尿をすべて出したつもりでいても、実はそれは振り子部尿道の尿を出しただけで、その奥にある曲がりくねった球部尿道にはまだ尿が残っていたりするのです。それが漏れ出ることによって追っかけ漏れが生じるわけです。そこで大事なのが排尿後のひと手間です。排尿が終わった後に尿道球部に残っている尿を陰嚢と肛門の間にある会陰(えいん)部という部位を指先で押して振子部尿道に押しやり、それをすべて尿道の外に出してください。尿道先端にも膨らんだスペース(尿道船状窩と言います)があるので最後まで油断せずに絞ってください。こうすることで下着を汚す頻度はぐっと少なくなります。ちなみにこの行為は便座に座って排尿した後だけでなく、立って排尿した後でもできますのでお試しください。


尿漏れがあると、冒頭述べたような尿取りパッドやおむつ購入といった経済的負担だけでなく、トイレが気になって旅行に行けなかったり運動を控えるようになるなど社会的制限が生じたり、自尊心が低下するなどさまざまなデメリットがあります。ここでご紹介した尿漏れ対策はどれもただちに実践できることばかりです。この機会に早速取り掛かってみてはいかがでしょうか。

(副会長 鈴木 伸和)