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北海道支部

北海道薬剤師会:2026年2月「やむをえないクルマでの避難生活を安全に過ごすために」

令和08年02月01日

日本国内では近年絶え間なく地震、津波、火山噴火、暴風雪や集中豪雨など様々な災害が起きており、今後も災害の危険が身近にあるといえます。特に寒冷地であります北海道内においては冬季に災害が起きると、多くの人命に関わることが予想されます。今回は災害時に車中泊避難をする際の健康被害を防ぐ注意点についてお伝えします。

車中泊避難とは、災害時に避難所ではなく車を避難先として選択することです。半日や1日単位ではなく、数日間車で生活を行うことをいいます。災害時は命を守る避難生活が重要です。やむをえず車で避難生活をするときの危険性や備えについて考えておく必要があります。

車中泊避難における身体的な危険性

エコノミークラス症候群

これまでの震災などで車中泊をされている方にエコノミークラス症候群の多発が知られています。食事や水分を十分に取らない状態で狭い座席に長時間座っていて足を動かさないと、血行不良が起こり、血液が固まりやすくなります。その結果、血の固まり(血栓)ができ、血管の中を流れ、肺に詰まって肺塞栓などを誘発するおそれがあります。これは突然死の危険性もある病気です。

低体温症

十分な暖房がないと低体温症の危険性があります。特にご高齢の方は体温を失いやすいことがわかっています。体の震えが止まらない、呼びかけへの反応が鈍いなどの低体温症の兆候が見られたら、すぐに体を温めるか、病院への搬送をお願いします。
低体温症を防ぐには、防寒着の着用や乾いた衣類の重ね着をする、上着の中に新聞紙を詰める、体を寄せ合うなどして体温が失われないようにしてください。また、温かい飲み物を飲むことも有効です。

一酸化炭素中毒

積雪により排気口が埋もれていたり、ガレージや閉鎖環境でエンジンをかけていると、充満した排気ガスの一酸化炭素を吸入する恐れがあります。

誤嚥性肺炎

避難時には誤嚥性肺炎が増えるため、口内を清潔に保ちましょう。

次のような症状があればすぐに車中泊をやめて、連絡先として指定された医療機関、あるいは救護所に行ってください。

  1. 片側の足がひどくむくんで痛い、赤くなっている
  2. 息苦しい、呼吸が早い、唇の色が悪い
  3. 身体がだるい、あるいは頭がぼんやりする
  4. 胸が痛い、重苦しい

安全な車中泊避難のための3つのポイント

できるだけ早期に車中泊をやめることが最善の策ですが、やむを得ず車で避難生活する際には以下の点に注意し備えてください。

ポイント1 安全な場所を選ぶ!

  • 建物などが倒壊しても被害を受けない場所を選びましょう。
  • ハザードマップ上で災害リスクがない場所を選びましょう。
  • 近くにトイレがあるか、物資が手に入るか確認しておきましょう。
  • 大雪時はマフラー周りに要注意!車の周辺や下を確認しましょう。
    自動車の周辺や下に危険物や可燃物がないか、定期的に確認してください。特に積雪時は、車のマフラーが雪で埋もれてしまうと、排気ガスが車内に逆流して、一酸化炭素中毒に陥るおそれがあり、非常に危険です。マフラー周りのこまめな除雪が必要です。
  • 大雨時の屋外避難は危険!自動車避難は控えましょう。

ポイント2 車中で体調を崩さない!

  • 日中は歩く機会を増やしましょう。
    4、5時間ごとに車外に出て歩く、車内でも足の運動を心がけてください。(かかとの上げ下ろし運動をしたり、ふくらはぎを軽くもんだりする。足の指でグーをつくる、足の指をひらく。)
  • 水平に、足を伸ばしたまま寝ることができるか確認しましょう。
    夜間は脚を伸ばした状態で眠るようにしてください。
  • 断熱、防寒対策を万全にしましょう。
  • 携帯トイレを用意しましょう。
    トイレのことが気になって、食事や水分を十分に取らないと、エコノミークラス症候群を発症しやすくなります。公共のトイレが使えないことも考え、携帯トイレを必ず用意してください。
  • 水分補給や適度な運動を心がけましょう。
    意識的に水分を摂取し脱水症を避けてください。特に発熱があると水分を失いやすいので注意が必要です。アルコールを控え、できれば禁煙するようにしてください。
  • 少しでも異変を感じたら、ためらわずに119番に連絡をしましょう

ポイント3 必要なモノを用意しましょう!

  • クッション、毛布
    シートの凹凸を埋めるために使用します。安眠・防寒対策にもなります。
  • 断熱マット、バスタオル
    断熱、防寒対策に必須です。プライバシーの確保にもなります。
  • 弾性ストッキング(着圧ソックス)
    エコノミークラス症候群の予防に効果ありますが、着圧に注意が必要です。(※1)
  • 携帯トイレ
    1人1日5回を目安に、人数分を用意してください。100円ショップでも購入可能です。
  • 水、食料、常用薬
    最低3日分×人数分の備蓄が必要です。飲料水は1人1日3リットルが目安で、食料は調理不要なレトルト食品や菓子類・栄養補助食品がオススメです。いつも服用しているお薬は3~7日分をローリングストックしておきましょう。お薬がなくなった際にお薬手帳は有効活用できますので忘れずに携帯してください。(※2、※3)
  • 歯ブラシ、歯磨きなど口腔内洗浄用具
    災害時も普段通りにお口の中を清潔に保つことが重要です。
  • 燃料(ガソリン)
    災害時は給油が困難になります。普段からこまめな給油を心がけてください。
  1. 購入時に薬局・ドラッグストアで確認してください。
  2. ローリングストックとは、普段から少し多めに食料や飲料水など生活用品を買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していくことで、常に一定量を家に備蓄しておく方法を言います。日常生活で消費しながら備蓄することです。
  3. 何日分を備蓄するかについては、かかりつけの医師または薬剤師に相談しましょう。

車中泊避難を安全に過ごすために、普段から車の構造や特性、車内の備品を確認し、備えておきましょう。

(常務理事 越智哲夫)