第21回:入れ歯について
令和08年04月27日
入れ歯について
入れ歯は高齢者が使用するものという印象を持たれることがありますが、実際には年齢に関わらず、歯を失った際の一般的な治療法の一つです。むし歯や歯周病、外傷などにより歯を失うことは、様々な世代において起きることであり、決して珍しいことではありません。
今回はその際の治療法の一つ、入れ歯についてお伝えします。
■ 歯を失うことによる影響
不幸にも歯を失ってしまった、抜かなくてはいけなくなった際、「この後どうなるの?」とよく質問をいただきます。
歯が欠損した状態を放置すると、周囲の歯が傾いたり移動したりすることで、かみ合わせ全体のバランスが崩れることがあります。また、咀嚼効率の低下により食べにくくなる、発音のしづらさが生じる場合もあります。さらに、失った本数、範囲によって見た目の変化につながることも考えられます。
その際、私たち歯科医師は、ブリッジ、インプラントなど複数の治療法の選択肢を提案しますが、そのうちの一つが入れ歯です。
■ 入れ歯の基本構造と特徴
入れ歯は、人工の歯とそれを支える床(歯ぐきに接する部分)から構成される装置で、取り外しが可能な点が特徴です。欠損している歯の本数や位置に応じて、主に以下の2種類に分類されます。
・部分入れ歯:一部の歯が残っている場合に使用され、残存歯に金属のばね(クラスプ)などをかけて固定します。
・総入れ歯:すべての歯を失った場合に使用され、歯ぐき全体で支える構造となります。
入れ歯は個々の口腔内の状態に合わせて製作されますが、装着初期には異物感や軽度の痛み、発音の違和感を訴えることがあります。これは口腔内の環境が変化することによるもので、多くの場合、一定期間の使用や調整を通じて軽減していきます。ただし、強い痛みや明らかな不適合がある場合には、無理に使用を続けず、歯科医療機関での調整が必要です。入れ歯は一度作製すれば終わりではなく、使用状況や顎の変化に応じて定期的な調整や修理が求められます。
■ 清掃と日常管理
入れ歯は取り外しができることがメリットにもデメリットにもなります。口腔内で使用する装置であるため、適切な清掃が重要です。食後には取り外して流水下で洗浄し、専用のブラシを用いて汚れを除去します。歯磨き粉の中には研磨剤が含まれているものもあり、入れ歯の表面を傷つける可能性があるため、使用には注意が必要です。もちろんご自身の歯もしっかりブラッシングする必要があります。バネをかけた部分に汚れがたまってむし歯になる恐れがあります。
また、就寝時に入れ歯を外すかどうかについては、口腔内の状態によって判断が異なります。歯科医師の指示に従うことが望まれます。加えて、定期的なチェックを受けることで、適合状態や清掃状況の確認が行われます。
■ 他の治療法に比べて
歯の欠損に対する治療法は入れ歯以外にも存在します。代表的なものとして、ブリッジとインプラントが挙げられます。
それらの治療法に比べると、入れ歯は比較的幅広い症例に対応でき、取り外しが可能である点が特徴ですが、装着感や管理の手間、また歯にかけるバネが見えてしまう、といった側面もあります。それぞれの治療法には利点と課題があるため、個々の生活環境やニーズに応じた検討が必要です。
■ まとめ
入れ歯は、歯を失った際の機能回復を目的とした基本的な治療法の一つであり、年齢に関わらず広く利用されています。適切に設計・調整された入れ歯は、咀嚼や発音の補助、見た目の回復に寄与します。一方で、装着初期の違和感や日常管理の必要性など、使用にあたって理解しておくべき点もあります。
もしも歯を失ってしまった場合には、歯科医療機関を受診し、様々な治療法について説明を受けた上で、自身に適した方法を選択することが重要です。
佐賀県歯科医師会 地域保健部
地域保健委員会 委員 福田 健
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