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予防歯科コラム第6回

【歯周病の予防法-生活習慣病の観点から(1)喫煙-】

 

 歯周病は、基本的には歯周病細菌による細菌感染症なので、その予防にはこれまでにお話ししてきたプラークコントロールが第一です。しかし、その発症、進行には生活習慣が強く関わっており、歯周病は生活習慣病の側面ももっています。喫煙、肥満、ストレス、食生活・栄養などと歯周病の関連が指摘されており、特に、喫煙は歯周病の最大のリスク因子の一つであることが多くの研究で明らかになっています。

 アメリカの国民健康栄養調査の結果では、タバコを吸わない人に比べてタバコを吸う人は平均して4倍歯周病になる危険度が高くなることが報告されています。生涯喫煙量(本数×年数)が増えるに従い、歯周病のリスクが上がることも示されています。また、喫煙者は非喫煙者に比べ、歯周病が進行しやすいことや歯周病の治療をしても治療効果が小さいことがわかっています。

 タバコの煙には、多くの有害物質が含まれています。なかでも、タール、一酸化炭素、ニコチンが三大有害物質と言われています。歯周病については、特に、ニコチンの影響が強く認められています。一般に、歯周病に罹患すると歯周組織に炎症が起こるため、歯ぐきが赤く腫れ、歯ブラシなどの刺激で出血しやすくなります。しかし、ニコチンには血管収縮作用があるため、歯周病に罹患した喫煙者では、歯ぐきの腫れや出血といった炎症症状があまり現れず、歯周病の発見が遅れることにつながります。しかし、見た目の歯ぐきの炎症は少なくても歯を支える歯槽骨は吸収され、歯周病が進行していきます。

 また、自分はタバコを吸わなくても、周囲にタバコを吸う人がいてタバコの煙を吸ってしまう受動喫煙も歯周病のリスクになります。さらに、喫煙は歯周病だけでなく、口腔癌や口唇・口蓋裂のリスクになることも報告されています。

 日本では、喫煙率は年々下がってきていますが、まだ、ほかの先進国と比較すると高い値を示しています。もちろん、禁煙したからといってすぐに歯周病のリスクがなくなるわけではありませんが、禁煙期間が長くなるほど歯周病のリスクも下がり、先のアメリカの調査では約11年で非喫煙者と同レベルになるという結果が出ています。

 もちろん、口の病気だけではなく、喫煙は肺癌など多くの全身疾患の原因にもなります。喫煙者の肺の写真を見たことがある人は多いかもしれませんが、自分の肺を実際に見ることはできません。しかし、口の中は自分で見ることができます。タバコを吸っていると歯の裏にヤニがつき黒くなりますし、歯ぐきもメラニン色素が沈着して黒くなりやすくなります。喫煙している人は、一度、鏡で自分の歯や歯ぐきを見てください。黒ずんでいるなと思ったら、禁煙してみませんか。

 

(関西女子短期大学 歯科衛生学科 永田 英樹 教授)