動脈硬化って、どんな病気?
●動脈硬化の3つのタイプ
動脈とは、心臓から送り出された血液を全身に運ぶための血管です。心臓から続く大動脈に始まり、枝分かれしながら徐々に細くなり、最後は細動脈と呼ばれる髪の毛ほどの細い血管になります。健康な人の動脈には弾力性があり、やわらかく、内壁も滑らかで血液はスムーズに流れています。
動脈硬化とは、この動脈が硬く狭くなり、血液が流れにくくなった状態をいいます。動脈は外膜、中膜、内膜の3層になっていて、動脈硬化はその起こり方や起こる部位によって、次の3つのタイプに分けられます。 |
|
細動脈硬化
脳や腎臓、目などのごく細い動脈に発生します。3層全体がもろくなり、血管が破裂して出血することもあります。高血圧が引き金になることが多い動脈硬化です。
中膜硬化
中膜にカルシウムがたまり、石灰化して起こります。中膜が硬く、もろくなり、血管が破れることもあります。大動脈や下肢の動脈、頸部の動脈に起こりやすいとされています。
アテローム(粥状)硬化
大動脈や脳動脈、心臓に血液を供給する冠動脈など、太い動脈に起こります。動脈の内膜に悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)などの脂肪がドロドロの粥状になってたまり(プラークという)、プラークによって血管壁が厚く硬くなるため、血管の内腔が次第に狭くなります。
動脈硬化は、なぜ恐いの?
●突然死の引き金となるアテローム硬化
3つの動脈硬化の中でも、日本人に急増しているのが「アテローム硬化」で、最も注意しなければならない動脈硬化です。その理由は、日本人の死因の上位を占めている狭心症や心筋梗塞などの心疾患、脳出血や脳梗塞などの脳血管疾患の多くがアテローム硬化を引き金に起こっているからです。
アテローム硬化は心臓の冠動脈や脳の動脈などの主要な臓器の動脈に起こります。アテローム硬化が進行すると、冠動脈の血流が悪くなり、狭心症を引き起こすことがあります。さらに進行すると、血管壁にこびりついたプラークがはがれ落ちて、血栓という血の塊をつくり、血栓が冠動脈や脳の動脈に詰まると心筋梗塞や脳梗塞を起こします。また、アテローム硬化によって血管は弾力性を失い、硬く、もろくなっているため、脳出血も起こりやすくなります。
いずれも突然死に繋がることもある恐ろしい病気ですが、動脈硬化そのものには自覚症状がありません。しかし、放置していると静かに病状は進行し、確実に心筋梗塞や脳梗塞へと向かいます。 |
●下肢の静脈に起こる閉塞性動脈硬化症
アテローム硬化は手足の血管に起こることもあります。閉塞性動脈硬化症という病気では、手足の血管の動脈硬化によって四肢の血流が悪くなり、痛みやしびれが起こります。重症になると完全に血流が途絶え、四肢の切断を余儀なくされることもあります。なお、閉塞性動脈硬化症の多くはアテローム硬化によるものですが、糖尿病を合併している場合は中膜硬化もみられます。 |
動脈硬化の原因は?
●動脈硬化を進める危険因子とは?
動脈は加齢とともに老化し、徐々に弾力性を失い硬くなっていきます。つまり、動脈硬化は老化現象の1つですが、進み方には個人差があります。その個人差を左右するのが高血圧や脂質異常症、喫煙、ストレスなどの危険因子です。
また、「メタボリックシンドローム」といって、内臓脂肪の蓄積(内臓脂肪型肥満)に加えて、高血圧、高血糖、脂質異常のうちいずれか2つ以上をあわせもった状態では、それぞれが軽症であっても、複数あわせもつことで動脈硬化を悪化させることもわかっています。 |
■動脈硬化の危険因子
動脈硬化を予防・改善するために
●危険因子は生活習慣の改善で減らすことができます
動脈硬化の進行を防ぐためには、危険因子を減らすことが大切です。そして、多くの危険因子は、生活習慣を改善することで減らすことができます。
まずは健診の結果などから、動脈硬化の危険因子を持っているかどうかを知り、危険因子が1つでもあれば、直ちに生活習慣を見直し、改善に努めましょう。
また、健診で高血圧や糖尿病、脂質異常症を指摘されている人は、これらの病気の危険因子を減らすとともに、病気を正しく治療することも大切です。 |
■生活習慣改善のポイント

●こんな検査でわかります
動脈硬化には高血圧や脂質異常など、いくつかの危険因子があり、危険因子を多く持っている人ほど動脈硬化の可能性が高くなります。そのため、高血圧を調べる血圧の検査、脂質異常を調べる脂質の検査、高血糖・糖尿病を調べる代謝系の検査などが、動脈硬化のリスクを見つける重要な手がかりとなります。
また、眼底検査では、眼底鏡などで眼底の網膜にある細動脈を調べます。眼底にある動脈は唯一、直接目で観察することのできる血管です。そこに動脈硬化があれば、脳の細動脈にも同程度の動脈硬化が起こっていることが予測されます。さらに、心電図では、狭心症があると特有の波形が現れるため、動脈硬化があることがわかります。
各検査項目の詳細については、こちらをご覧ください。 |