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櫃本氏:第4回「長寿国を築き上げてきた日本の医療の特徴」

第4回「長寿国を築き上げてきた日本の医療の特徴」 

愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長

櫃本 真聿氏 

 

 日本の平均寿命は世界一レベルであり、今後世界の先頭を切って前人未踏の超高齢社会に突入します。老人医療費の急増による医療費の高騰や、へき地・郡部の深刻な医師不足問題等を背景に、医療制度の見直しを迫られています。確かにこのままの医療システムを継続することは、経済的にも人材的にも不可能だと言っても過言ではありません。しかし見直しの前に、これまでの日本の医療について、その特徴を十分理解しておくことが肝要だと思います。国際比較から見ると特に以下のような点が挙げられます。

1)  先進諸国中で総医療費(対GDP比)も個人当たりの医療費も最も低いレベル。

2)  国民皆保険制度の下、いつでもどこにでも受診できる環境(フリーアクセス)が、医療機関の利用を促進させており、医師1人当たりの診察件数は欧米諸国の4倍にも達する。

3)  人口あたりの病床数が多く、平均在院日数は欧米先進国の約4倍であり、療養も含め概ね回復した状態までフォローして退院する例が多い。在宅や地域で医療を受けるケースは少ない。

4)  CT・MRIなど高度な医療機器の台数が圧倒的に多く、しかも身近な医療機関で利用でき、疾病が早期に発見され治療につながりやすい環境がある。

 国際比較ではこのように、人口当たりの病床数や先進医療機器保有数の多さはわが国の特徴であり、そのことがしばしば医療費高騰の要因として指摘されてきました。しかし実際には、日本の医療費は諸外国と比べてむしろ明らかに低い実態から、医療費を下げる目的で、国際間の差をとにかく是正するといった対応は適切でないようにも思います。

 近年医療費抑制に主眼を置いた制度的要因から、急性期病院の平均在院日数短縮化が急速に進んでいますが、その影響で医療難民・介護難民急増を招くという問題点が指摘されています。これまでのシステムを真っ向から否定し、諸外国特にアメリカの制度との比較から、急激な改革を進めるより、日本の実情にあった改善が、国民相互理解の下で進められることを期待します。

 確かに住民の医療への依存度が高い状況を 今こそ見直す時ではあると思います。しかし、個人負担の増加や入院期間の短縮化といった制度誘導ではなく、国民自身がこの超高齢社会に、医療をどう活用していくかを明確にしていくことが求められていると思います。そして日本の医療や介護について、必要に迫られる前に理解し、いざという時に慌てず活用できる住民の力を養う必要性を痛感しています。 

  


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