ページ上部です

櫃本氏:第9回「被災から学ぶ~生活不活発病に注意~」

第9回「被災から学ぶ~生活不活発病に注意~」

愛媛大学医学部附属病院医療福祉支援センター長

櫃本 真聿氏

 

 東日本地震・津波による大被災はいまだ多くの課題を残しています。その一つとして、仮の住処でのいわゆる避難生活に伴い、被災した高齢者等の方々に、生活の不活発化を原因とする心身の機能の低下、いわゆる「生活不活発病」の発症が危惧されています。これまで築いてきた財産はもとより、日常生活の役割や生きがいまでも失った中で、何もすることが無くなり「動かない」状態が続くことにより、心身の機能が低下して、本当に「動けなくなる」状態を指します。特に高齢の方や持病のある方は起こしやすく、血管に血栓を作り重篤な疾患を引きおこすエコノミック症候群や、認知症を発症・悪化させたり、うつ病を併発したり、さらに寝たきり状態になったりといった悪循環をおこすことになります。いわゆる“引きこもり老人”と同様の状態を招くことになります。

 生活不活発病を予防するためには、生活を活発にすることが重要であり、“予防のポイント”として、以下のことが提案されています。

○ 毎日の生活の中でできるだけ動くようにする。

○ 家庭・地域・社会で、楽しみや役割を持ち、散歩やスポーツ、また趣味もしっかり持つ。

○ 歩きにくくなっても、すぐに車いすを使うのではなく、杖や伝い歩きなどの工夫をしてできるだけ足を使う。

○ 身の回りのことや家事などがやりにくくなったら、「仕方ない」と思わずに早めに相談し、自ら工夫や練習して上手に生活する。

○ 疲れ易い時は、少しずつ回数多く。病気の時は、どの程度動いてよいか相談をするなど、とにかく「無理は禁物」「安静第一」と思いこまないで、できるだけ身体を動かすようにする。

 実は以上のような悪循環が、病院においても日常茶飯事におきていることを知る必要があります。自ら動ける患者さんが、真っ昼間布団をかぶって寝ている状況を目にすることがよくあります。病院は“病気と戦う場”として位置づけられ、そのため病気の診断治療が最優先され、そのために生活自体が犠牲にされることが少なくありません。入院により生活が見えなくなり、希望を持たないまま医療への依存が増して、同様の悪循環をおこし、例え病状自体は改善・回復したとしても、動けなくなり認知症が進んで、元の生活の場に戻れなくなることが危惧されます。

 「何のために入院するのか?」・・・どんなに重症であり治療に専念する必要があっても、その人らしい人生を実現するために医療は活用されるべきであり、そのためにも入院が生活と隔絶された特殊な環境となってしまうことは避けるべきだと思います。

 


【バックナンバー】