春から夏にかけて日ごとに暖かくなり、レジャーやイベントなど、アウトドアで調理したり、飲んだり食べたりする機会が増える時期でもあります。そんなときに注意したいのが、食中毒です。
食中毒は、1年を通じて発生し、「細菌」「ウイルス」「自然毒」などがその原因となっています。きのこやふぐなどの自然毒による食中毒などもありますが、高温多湿となる梅雨の時期から残暑の頃にかけては、細菌の増殖が活発になるため、細菌による食中毒が発生しやすくなります。
食中毒の原因となる細菌は、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、ウェルシュ菌など種類はたくさんありますが、発生件数が多かったり、乳児の重症化した事例が起きたりしているのが、O-157やO-111で知られる「腸管出血性大腸菌」や「カンピロバクター」です。抵抗力の弱い子どもや妊婦、高齢者の人は重症化する場合もあるので、注意が必要です。細菌を繁殖させないことが予防法の一つといえます。
腸管出血性大腸菌やカンピロバクターなどの細菌は家畜の腸にいる細菌で、これらの細菌は熱に弱いため、十分加熱していれば食中毒はおこりません。近頃増えている食中毒は、生肉、生レバーなどの肉類を生で食べたり、加熱不十分な肉類を食べたり、手指や調理器具などを介して菌が付着した野菜などを生で食べることで発生している場合もあります。
食中毒を防ぐには、生肉や加熱が不十分な肉料理は食べないようにしましょう。
食中毒は、アウトドアだけでなく家庭でも発生します。食中毒を防ぐ基本は、原因菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」ことです。
■細菌性食中毒の予防のポイント
■バーベキューなどで生肉、生レバー、生魚介類中毒予防のポイント
細菌が付着した食べ物を食べても、食中毒になる人とならない人がいます。これは、免疫機能の違いによるものです。人は、悪影響を及ぼす菌などを撃退する免疫力を備えており、乳幼児やお年寄りなど免疫力が弱い人やお腹の調子が悪い人は、中毒を起こしやすくなります。日頃から免疫力を強くすることも大事な予防法の一つです。
免疫力のカギを握るのが、腸です。腸には、体内の免疫細胞の約6割が集中しているといわれています。健康的な腸内環境は、ビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌が活発に機能しており、悪玉菌などがあまり活動していない状態です。善玉菌は乳酸や酢酸などを生み出し、腸内を酸性にします。これが悪玉菌の増殖を抑えて腸の運動を活発にし、食中毒菌や病原菌による感染を予防するほか、発がん性物質を抑制する腸内環境をつくります。腸内の善玉菌を増やすのに効果的なのが野菜です。とくに「食物繊維」の豊富なさつまいも・切り干し大根・かぼちゃ・ごぼう・たけのこ・ブロッコリー・モロヘイヤなどはオススメです。「オリゴ糖」も善玉菌を増やす力があり、大豆・たまねぎ・ごぼう・ねぎ・にんにく・アスパラガス・バナナなどの食品に多く含まれていますので、これらの食材を食事に取り入れていきましょう。
バランスの取れた食生活で免疫力を高めて、食中毒に負けない健康づくりを心がけたいものです。
[監修]東京大学付属病院アレルギーリウマチ内科 医師・医学博士
女子栄養大学大学院 成人・高齢者保健学 非常勤講師
関谷 剛