ドクターすなみの脳のおはなし

第15回「まさかあなたが!?くも膜下出血」その1

 

 

松山市民病院脳神経外科部長

角南 典生氏

 

 Aさんは45才のキャリアウーマン。その日も会社で会議の後、ちょっと疲れたなとソファに座った途端でした。額から眼の奥にかけてズキンと頭が割れるんじゃないかと思うほどの激痛でその場に倒れこんでしまいました。一瞬意識が遠のきましたが、気がつくと後頭部から項にかけてズキンズキンとひどい痛みが続き、ただごとではないと思いました。近くにいた同僚に、

「頭が割れるように痛いの。何か頭に起こったような気がする」と叫んだまま意識を失ってしまいました。

 それから30分後、Aさんの夫に連絡が入りました。

「こちらは松山市民病院です。奥様が先ほど救急車で搬送されました。重症のくも膜下出血です。すぐに来ていただきたいのですが」

「わ、わかりました。すぐ参ります」

 病院に到着するとすぐに担当医に呼ばれました。

「脳神経外科の角南と申します。Aさんのご主人ですね」

「はい。妻はどんな状態でしょうか?助かりますか?」

「重症のくも膜下出血です。意識はありません。呼吸状態が悪いので、気管内挿管といって呼吸しやすいように気道を確保するため、口からのどへチューブを入れました。CT写真を見てください。くも膜下出血は頭の中央部に多く、造影剤を使ったCTで前交通動脈に8mm程度の動脈瘤を認め、これが破裂したものと思われます」

「手術ですか?」

「はい。手術したいのですが、今の状態では困難です。しばらく点滴や呼吸の管理をして、意識状態の改善が見られれば手術の方向で検討したいと思います」

 その後、集中治療室で人工呼吸器につながれ、しばらく様子をみるとのことでした。まったく意識がなく、手を握ってもまったく反応はありませんでした。

 息子と娘それに妻の両親がそろったところで、再度担当医から説明がありました。今度は病状説明書に主治医自らが書いて説明があり、病名や今後の治療方針などが書かれていました。医師の自筆のサインがあり、家族全員1人1人がサインしました。1部をもらい、もう1部をカルテに残すとのことでした。非常に危険な状態だと感じました。集中治療室のそばの控え室に娘と2人で泊まることにしました。

 翌朝、妻はわずかですが目を開け、手を握るようになりました。呼吸状態も落ち着いているとのこと。朝8時から脳血管撮影の検査が行われ、前交通動脈瘤と右内頚動脈にも破れていない小さな動脈瘤が見つかりました。脳血管撮影の後、9時から約30分間担当医から手術の詳細、その後の予想される経過と治療、危険性などについて詳しい話があり、手術の同意書、輸血の同意書、術後に安静を要するため場合によっては手足を抑制するという同意書にもサインしました。9時30分、手術室に運ばれて行きました。

 手術は10時30分ころから始まったようです。食事をする気にもならず、のどだけはやたらと渇きました。午後2時過ぎ、看護師さんが

「無事クリップがかかりました。破れた脳動脈瘤と破れていない動脈瘤との両方ともクリップができました。あと1時間くらいで手術が終わる予定です」

と知らせてくれました。皆で手を取り合って「よかった、よかった」と涙を流して喜びました。

 主治医が4時前に来て説明を聞きました。予定通りの手術ができたこと。主治医もほっとした様子。それからさらに1時間ほどして集中治療室に案内されました。まだ口にはチューブが入り、人工呼吸器につながれていました。呼吸の管理が重要なので、翌朝までは機械で呼吸を助けるそうです。心配でしたが少しほっとし、帰宅しました。 

第16回につづく

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